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#50 ページ1


Side Yuki.

Aさんのロシア戦は、鮮明に、そして鮮烈に俺たちに衝撃を与えた。

レセプションにおいては課題が残っているようだった。それでもレシーブ後の攻撃への切り替えが以前よりスムーズになっている。

柳「......あー」

マサさんが普段出さないような声を上げてシートの背もたれに体を預ける。

柳「悔しいけど、かっけーこいつ...」

きっと本音が漏れたんだと思う。
思わず、わかる、と俺も言った。

石「いつもそう。普段は鈍感でぽんこつなのに、バレーになると想像以上に魅せてくる」

本当に良かった。彼女を誰かが見つけてくれて。
きっと誰かが引っ張り上げないと、この世界に足を踏み入れず、どこかで普通の女性として暮らしていたままだっただろう。

そして俺も、ここまで心を占めてくる存在が現れないままだったのかもしれない。

高「...そろそろスマホ返してもらっていいすか?」

柳「ほらよ」

高「あ!そんな乱暴に!」

彼女は、こっちの結果を見てがっかりしているかもしれない。そもそも、こっちの事など気にしていないかもしれない。

石「...俺が明日一番得点する」

柳「いや俺だな」

Aさん、チーム最多得点22点か。
結構大変、かも。

試合後のインタビューで、最多得点について聞かれるAさんは、少し考えて、あまりスッキリしない表情で口を開く。

"花「負けたのは、まだ点が足りないからです。決めれるはずのシーンもありましたし、そこでやりきれなかったことが悔しいです」"

最多得点なんて気にしていない。
飽くなき探究心と向上心。
この人は本当にブレないから常に進化し続ける。

清「こんなん、ワールドカップ一年生が言う事ちゃうな」

全日本男子を牽引する清水さんが言う。

清「もうこの子の右腕に、世界懸けてしもてるやん......俺らも、続くしかないなぁ!」

清水さんの一声に一同の士気が高まった。

深「こっちの若手にも頑張ってもらわな!」

高「もちろんっすよ!花井さんにかっこいいとこ見せないと!花井さんだけがカッコいいままじゃ終われねぇぜ!」

山「まぁ、見せたところでお前は相手にされないけどな」

高「何だとぉ!」

うるせぇ、と笑う。

柳「勝つぞ、明日」

石「言われなくても」




翌日のフランス戦。
戦歴で言うと、格上の相手なのは間違いない。

それでも、前日にモチベーションを上げてもらったおかげで、どんなに崩しに来ようとも全員が集中力を切らす事はなかった。

セットカウント4-1で、勝利を収めた。


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作者名:松野 | 作成日時:2019年11月16日 21時

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