【HQ!!】脚をなくした彼は。―second―

泣いてないで。 ページ33

「日向さん流石です!!」

「Aくん格好いいよー!!」

『ウェーイ!!ありがとー!!』

菅原は声が出なかった。
いや、出せなかった、と言う方が合っているかも知れない。
どちらにしろ、驚きで何も話せなかったのである。

「どう?」

紘臣の声に、ハッと彼の方を見た。
そしてゆっくりとAに目線を戻す。

「……凄い、ですね。凄いしか言えないです」

「ははっ、君、Aくんとおんなじ様な事言ってる」

今、菅原の目の前では、シッティングバレーボールが展開されている。
どうやら本格的な試合ではないらしく、三つのコートでそれぞれ同じ位の歳の男女が集まり、遊び感覚でプレイしているようだ。
Aが居るコートは、菅原達のすぐ前。

「あの、同じ部活の奴ら呼んでもいいですか?」

「おお!!勿論!!シッティングバレーが広まるなら大歓迎だよ」





「失礼しまー……うお、すげぇ」

「こんちはー」

数分後、烏野の都合がつくメンバーがやって来た。
皆が皆、体育館に入った瞬間に驚いた様な顔を見せる。

「す、座ってバレーしてる……。座ってやってるよツッキー!!」

「見ればわかるから」

今回ばかりは、月島の口から"うるさい山口"が繰り出される事は無かった。

「「あざしたー!!」」

丁度その時、Aの居るコートの試合が終了した。
Aは器用に立ち上がって、汗を拭きながら仲間達と楽しそうに話していた。
……かつての健常な頃の様に。

「兄、ちゃん……」

翔陽が小さく呟いた。
と、Aと話していた仲間が「何かいっぺー来てる」と、烏野メンバーを指さす。
Aはそれに気付き、彼らに駆け寄って行った。

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