不可逆性。 ページ27
病院に戻り、Aは急ぎ足で中庭へと向かった。
入院中の姉をもつ彼女___優季に会いに。
この時間なら、彼女は中庭にいるはずだ。
『……あ、優季ちゃん!!』
「……Aさん。こんにちは」
やはりいた。
予想通りだった。
「……どうしたんですか?」
疲労を見せる彼に違和感を感じたのであろう。
優季が、Aを覗き込むように声を掛ける。
『ゆ、優季ちゃん。すんごいの発見したんや』
興奮気味に彼女の肩を掴むA。
その姿に、優季はどこか会ったばかりの彼の面影を重ねた。
『脚が……翼が無くても出来るバレー!!』
「翼……が、な、くても……?」
バレーをするにあたって脚というものは、鳥に例えれば翼になる。
一番重要で、細胞で言えば核である脚をなくせば、もう二度とバレーなんて出来ない。
……そう思っていたのに。
『シッティングバレーボールや!!座ってプレイするバレー!!』
運命というものは、なんて皮肉なものなのだろうか。
優季にとってAとの出逢いが、これが原因で重要なものとなる。
彼と出逢ったのは偶然か……はたまた必然なのか。
そっと咲いた花のように、優季は、自分の心が疼くのを感じた。
そして……生き甲斐をなくし、絶望し、もう二度と立ち直れまいと思っていた彼が。
ないはずの脚を力の限り踏ん張って、立ち上がろうとしている。
その姿が……優季には、まるでカーテンから差し込む細い日の光のように……
今は小さくても、心細くても、頼りがいがなくても。
一つの切っ掛け……カーテンを左右に目一杯開ける、というその小さな動作で……。
部屋全体を明るく照らす朝日のように……そう、見えたのだった。
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フルーツヨーグルト - すごく良い話でした!!その後の物語が読みたいです!!! (2019年1月7日 11時) (レス) id: 6500d8f78f (このIDを非表示/違反報告)
隣のふー@くろまめ。(プロフ) - 永久狐。さん» 形見って何だ笑 絡み、ですね!! (2015年9月21日 10時) (レス) id: c638190847 (このIDを非表示/違反報告)
隣のふー@くろまめ。(プロフ) - 永久狐。さん» 有難う御座います、嬉しい限りです!!青城との形見は、番外編?後日談?のようなもので書かせて頂こうと思います!!ご意見有難う御座いました。 (2015年9月20日 15時) (レス) id: c638190847 (このIDを非表示/違反報告)
永久狐。 - めっちゃおもろいし、感動しました!あと、もしよかったら及川さんとか、岩ちゃんとかともかかわってほしいです! (2015年9月20日 13時) (レス) id: f751c0a108 (このIDを非表示/違反報告)
隣のふー@くろまめ。(プロフ) - まなみさん» 初めまして。感動して頂けましたか…!有難う御座います!私が結構すぐ諦めちゃう性格なので、その辺夢主くんにやらせてますねw (2015年1月25日 23時) (レス) id: 712ba0ee00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:隣のふー@くろまめ。 | 作者ホームページ:
作成日時:2014年7月13日 0時