【HQ!!】脚をなくした彼は。―second―

悲しくてもさ。 ページ17

「じゃー、リハビリ頑張っていきましょう!!」

病室にて、看護婦が笑って言った。
Aはその言葉に小さく目を見開いて、それからおかしそうに笑った。

「日向さん、どうかしましたか?」

Aを怪訝そうに覗き込む看護婦。

『ああ、いや……。俺少し前まで"頑張れ"って言われるのが嫌だったんですよ。頑張ってんのに、これ以上頑張れ言うんかって、そう思っちゃって。
……でも今はそう思わなくて……"頑張れ"っていうのは皆の素直な応援だったんだって分かって』

「またバレーが出来るようになりたい、っていう思いを持てたからですね!!」

『いや、そうじゃなくて……』

「……え?」

Aが否定するように手を振る。
看護婦はそれに首を傾げた。

『もう二度とバレーは出来ないって、踏ん切りがついたからです』

看護婦は言葉が出なかった。
まるで普通のことを言うように、さらりと簡単に発したからだ。

『医者も「バレーは愚か、軽いスポーツも出来ない」って言ってましたし』

「……聞いてたんですね」

Aは頷いた。
暫く二人とも無言になっていると、聞こえるのは一つの声。

「……何で」

『え……

――翔陽』

病室の入り口にいたのは翔陽。
Aは彼を見て微笑んだ。

『何や、来てたんか翔陽。どうし――』

「何でバレーは出来ないって言うの?」

Aの言葉を遮って、翔陽が小さな声で問う。
看護婦が悲痛な表情を見せた。

「兄ちゃん、バレー好きだったじゃん。バレーがもう一回したいから、リハビリ続けてきたんでしょ?
……何で今諦めるの?そんなんじゃ、変わるもんも変わんないよ」

『……バレーが好きや。俺はたしかにバレーが大好きだよ。本当は一回でもいいからまた、バレーがやりてぇよ。
でもさ……頑張ったってどうにもならないことってのがあるんや。
願ったって叶わないことってのがあるんや』

翔陽は未だに納得できなそうな顔でAを見つめる。
Aは、伏し目がちに笑っていた。

そんなこと言っても。→←君と笑ってたい。

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