【HQ!!】脚をなくした彼は。―second―

お久し振り。 ページ11

「兄ちゃーん!!」

「ちわっす」

後日。
勉強や部活の合間をぬい、Aの見舞いにやって来た翔陽と影山。

『……』

しかしAは彼らに気付いていないらしく、ベッドの上で一点をぼーっと見つめていた。
異変を感じた翔陽は、兄の近くに移動する。

「……兄ちゃん?」

『―――ｯ?!!……翔陽。影山も』

今度は聞こえたらしく、驚いた様子で顔を上げてから笑った。
影山も、軽く会釈をしながらAに近付いた。

「……Aさん、大丈夫っすか?」

『ああ、うん。平気』

影山の問いに少し焦ったように返す。
翔陽たちは首を傾げた。
……気を取り直し、翔陽がAに話し掛けた。

「に、兄ちゃん。調子はどう?痛くない?辛くない?大丈夫?」

「日向、そんな一気に聞いたら返しづらいだろ」

「そ、そっか。ごめん兄ちゃん」

『ははっ、翔陽お前慌てすぎ』

あの、溌剌とした元気な笑みを見せた。
その笑顔を見、翔陽と影山は安心したように微笑む。

それから数分間話をして、別れの時間がやってきた。

「じゃあそろそろ、俺らは帰ります」

「じゃーな!!」

『おう』

翔陽たちに手を振るA。
翔陽は元気に手を振り返し、影山は会釈をした。

「頑張ってな!!」

不意に、翔陽がそう言った。
何故かその言葉が、Aの心にズキンと刺さった。

弟たちが帰り、Aはまた一点を見つめる。
その手には一枚の紙切れが。
妹の夏が、A宛に描いた絵らしい。

『……ふふ』

開いて見ると、彼女らしい絵が描いてあり、その下に"A兄ちゃん"と記してあった。
どうやらAの顔を描いたらしい。

『……あ』

夏からの絵にも、"がんばって"の文字が。
それはまた、Aの心を痛ませた。

辛いことばっかじゃ。→←いつか報われるかな。

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