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彼は自分の部屋らしい扉の前でようやく足を止め、
口と俺と繋がれていない手を器用に使って、
キーケースから部屋の鍵を選び取って押し込んだ。
ガチャリとドアが開くと、
俺の手はまた強く引っ張られてその中に連れ込まれる。
ドアが閉まった音。
ガシャンと投げられたような音がしたのは、
鍵が床に投げ捨てられた音だろう。
気づけば、電気もつかない暗い部屋の中、
濡れた靴を脱ぐ暇すら与えられず、
俺は玄関先で押し倒されていた。
「…めめ…？」
「言いましたよね、
俺のことを満たしてくれるって」
血を我慢できずに、甘えたように俺の首筋に噛み付いてくるのとは、
明らかに空気が違っていた。
「我慢できない」
と俺に優しく噛み付いてきたあの新米吸血鬼では、もうない。
彼の顔はやっぱりまだ見えなかった。
ただその息遣いだけは聞こえる。
彼の熱が近づいてくる。
「俺は、阿部ちゃんじゃないと駄目なんだよ」
「俺」ではなく、「俺の血」でしょう？
めめを満たすことが出来るのは所詮、
「俺」という存在ではないんだね。
暗闇の中、心の中で静かに毒づきながら、
やがて訪れるだろう首元の痛みに備えて目を閉じた。
目を開いていても閉じていても、
何も見えないことは変わらないのに。
それはせめてもの抵抗のつもりだった。
「…っ」
しかし、降ってきたのは痛みではなく、
触れ合ったのは首筋ではなく、
唇と唇が重なるやわらかな感触だった。
突然の出来事に息の仕方を忘れる。
事実、塞がれた口からは息が吸えなかったのだから仕方がない。
「本当は、阿部ちゃんしか、いらない」
その言葉を、俺はどう受け取るのが正解だったのだろうか。
ただ、悲しいほど、苦しいほど、狂おしいほど、
塞がれてもいないのに息ができないほどに、
感情が溢れ出して止まらなくなったことだけは覚えている。
考察しようと思っていた、
ずっと解けなくてもやもやしていたクイズの回答は、
あっさりと、普段は馬鹿な彼に提示された。
少しだけ悔しかった。
焦らすようにゆっくり剥がされる唇の後を、
彼が身体を持ち上げる軌道を思い浮かべる。
「めめ、」
もう一度、あの優しく激しい口づけを。
あのピリッと痛む痛みを、
吸い上げられる快楽を、
俺に、
俺だけに。
＿＿＿もっと、ちょうだい。
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haryu(プロフ) - パスワードにつきましては、調べればすぐに出てくる簡単なものになりますのであえて明言はしないつもりです…どうしてもの場合は、この界隈で気を付けていることをメッセージ等で教えていただけましたらお伝えするかもですが、とっても簡単なので調べてみてくださいね (2021年7月27日 21時) (
レス) id: 4773123c33 (このIDを非表示/違反報告)
maeson(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいております☆PWの件でメッセージを送りましたので、確認していた抱けると嬉しいです。よろしくお願いします。 (2021年7月16日 0時) (レス) id: fb509ff87f (このIDを非表示/違反報告)
るあ - すみません（汗）1つ聞きたいのですが、haryu様がパスワードを掛けている作品のパスワードが分からないので答えてもしくはヒントを頂きたいです (2021年7月13日 21時) (レス) id: 6c3c1d460c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：haryu
| 作成日時：2021年1月2日 22時
