オカネだけの関係

ボランティアってことにしておこう。 ページ1

初めてバイトで稼いだお金は、友達を助けるために使った。
　
友達といってもただのクラスメートで、それ以上でもそれ以下でもないけれど。
　
気弱そうな女の子一人が囲まれて、お金を要求されていた。
　
中学生のお財布事情なんてたかが知れているし、その時彼女はお財布すら持ってきていなかった。
　
　
彼女が好きだった訳でも、自分が正義のヒーローなわけでもないけれど、
　
なんとなく、この状況が恥ずかしくて情けなくて。
　
　
　「これでいい？」
　
　
自分の財布から新しい一万円札を出し、その輪の中に投げ入れた。
　
クラスメート達は、自分達の思ってた以上の値段に少し戸惑っていたけれど。
　
これで欲しいギターとは一歩遠ざかってしまったけれど、まぁ仕方ない。
　
また来月の給料まで待てばいい。そんなに急いでいないし。
　
　
　
「あの、いつか、返すので」
　
彼女はペコペコと頭を下げてきたけれど、恩に着せたつもりはないし、別にどうでもよかった。
　
いつでもいいよ、とテキトーに返事をして流す。
　
結局彼女とはそれっきり特に会話もせず、お金も返してもらえないまま卒業した。
　
　
　

　
　
　
　
＿＿＿＿＿＿＿＿＿そんな事もあったなぁ、と今更になって思い出した。
　
中学生って、何年前の話。
　
俺でも忘れていたくらいだから、彼女だって忘れているはずだ。
　
バイト代だってあの時より倍近く貰えているし、ギターだって手に入った。
　
なんなら新しいギターを買ったし。
　
だからまぁ、ボランティアだったって事で解決、
　
･･･したはずだったんだ。
　
　
　
まさか今度は、俺がお金を払って彼女に助けてもらう事になるなんて、ねぇ。
　
あの時の俺、想像してた？
　
　
　

「帰ってくるな」→

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