オカネだけの関係

「ご指名です！」 ページ3

私の家は貧しくて、大学を続けるためにバイトをかけもちしている。
　
朝の新聞配達、夜は居酒屋･･･
　
充実していたし安定もしていたが、そろそろ身体が持たなくなってきてしまった。
　
そこで見つけたのが、新聞配達と居酒屋の給料を合わせてもおつりがくるような給料の仕事。
　
　

恋人代行、レンタル彼女というやつだ。
　
　
　
危ない匂いがして警戒していたが、厳しい規律で守られていて、安心して働くことができている。
　
指名がない時は週１で事務所のお掃除に行く。
　
そんな仕事だけでこんな給料がもらえるなんて夢にも思っていなかった。
　
　
いつ事務所が破綻するかとヒヤヒヤだが、
　
どこかから出たお金で成り立っているどころか潤っている。
　
中々闇が深そうで浅そうで、深く追及するのはやめた。
　
　
　
　
「あ、」
　
事務所のＨＰの個人連絡用チャットに新着が来ていた。
　
ここ数ヶ月、いや１年以上依頼が無かった気がする。
　
歳は２０代前半、私と同じくらいだろうか。
　
依頼内容を見るために画面をスクロールする。
　
　
　
　
　
『間違っていたらすみません。××中出身のAさんですか』
　
２０代男性 PN:伊東歌詞太郎
　
　
　
　
　
＿＿＿＿＿＿＿伊東くん！？
　
　
　
思わず立ち上がってしまう。
　
多分同い年で、××中学校の伊東歌詞太郎なんて、思い当たる人は一人しかいない。
　
私を助けてくれた伊東くんだ。忘れるはずがない。
　
　
『そうです！お久しぶりです、伊東くん』
　
『良かった。合ってた。Aさんにお願いしたい事があるんです』
　
　
依頼内容をよく聞かないままＯＫを出した。
　
そうだ、私は彼に返さなきゃいけないものがある。
　
　

ずっと封筒に入れて引き出しの中で眠ってたの。
　
バイトを始めて最初の給料から取った、一万円。
　
　
　
　
　

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