【SAO】もう1人のビーター〜希望と絶望のシンフォニー〜

ビーター ページ23

「元ベータテスター、だって？ ……俺を、あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」

「な……なんだと……？」

「いいか、よく思い出せよ。SAOのCBT(クローズドベータテスト)はとんでもない倍率の抽選だったんだぜ。
受かった千人のうち、本物のMMOゲーマーが何人いたと幼馴染み思う。ほとんどはレベリングのやり方も知らない初心者(ニュービー)だったよ。今のあんたらの方がまだしもマシさ」




侮蔑極まるキリトの言葉。
全て事実なのは確かだ。実際、ベータテスト中に何度もレベリングのやり方を尋ねられた。

だけど、この言い方はないだろう。まるで、全ての視線を自分に集めるかのような……まさか




『……っキリト』
「──でも、俺はあんな奴らとは違う。
俺はベータテスト中に、他の誰も到達できなかった層まで登った。ボスのカタナスキルを知っていたのは、ずっと上の層でカタナを使うMobと散々戦ったからだ。他にも色々知ってるぜ、アルゴなんか問題にならないくらいな」


「…………なんだよ、それ……」



E隊の男が、掠れた声で言った。



「そんなの……ベータテスターどころじゃねえじゃんか……もうチートだろ、チーターだろそんなの！」


周囲から、そうだ、チーターだ、ベータのチーターだ、という声が幾つも湧き上がる。
それらはやがて混じり合い、【ビーター】という単語になった。



キリトは、この世界にいるベータテスターが本来浴びるべき視線を、自分に集めようとしているのだ。



「……【ビーター】、いい呼び方だなそれ。
そうだ、俺は【ビーター】だ。これからは、元テスター如きと一緒にしないでくれ」



私はベータ時代、キリトと競うように上の層を目指した。あの頃は死んでも蘇生ポイントに戻るだけだったのもあり、一人でボスに挑み、どちらが先に次の層をアクティベートできるかを、毎日のように争った。

そんなキリトにだけ、全てを背負わせるわけにはいかない。

だってほら、キリト泣きそうじゃんか。
ホントは怖いんでしょ。この世界で死んだら、現実の自分も死んじゃうもんね。怖いよね。

私も怖いよ。




『──ッ、ククッ……ふふ、あはははっ!!』




みんなの視線が私に集まる。当たり前だ。この状況でいきなり笑い始めるなんて、ただの頭がおかしい奴だ。




『ねえ、キリト。なぁに一人でいい格好してんのさー。
上の層まで辿り着いたのはキリトだけじゃない、私もいるよねぇ』

「ルーリア……っ！」

綺麗→←見殺し

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す