5話 ページ6
『ねー、恵くん。明日、任務だってさ。聞いた？』
「昨日五条先生からな。お前が引率だってな。」
8月某日────
交流会まで徹底的に扱きにかかっていた生徒達を集め、五条はいつものように飄々とした態度で任務を言い渡した。
「明後日、君達にはちょーっと大変な任務に行ってもらいます！」
「何ですか、急に。」
「暑いのによくもまあ、あんなに元気ね。」
「まあまあ！ でも僕、多忙で引率出来ないからさ、代わりの術師を手配したよ！」
「てか任務って、1、2年合同で行くのかよ。」
「もっちろん！」
なんてったって、準1級案件だからね。
五条が声色1つ変えず告げた言葉に対し、生徒達の間に緊張が走る。
本来、同等級の術師が任務に当たることになっている。
人手不足故に、手に余る任務を請け負うことも多々あるとはいえ、虎杖悠仁の件があった後である。
「準1級って……、あんた正気ですか。」
「この中じゃ、棘がいいとこだぞ。」
「しゃけ。」
「だーいじょうぶ。だから言ったでしょ？ 代わりの術師を手配したって。」
あの子がいればきっと大丈夫さ、と自信ありげに言う五条に対し、伏黒はピンときた。
五条が信頼をおいている術師自体、そんなに多くない。
準1級案件に対応できて、
「……Aですか？」
「は？ A？」
「さっすが恵！ 大正解！」
と、ここまで来て冒頭へと遡る。
『もともと悟くんの任務なのに、なんで……｡』
「釘崎、かなり怒ってたぞ。テスト期間と夏季補講でいっさい顔見せないかと思いきや、いきなり引率なんて。」
『引率なんて立派なものじゃないから……｡』
電話口で、はあ、と深い溜め息こぼすA。
思わず大変だなと言いかけた伏黒だったが、すんでのところで飲みこんだ。
大変じゃないはずがないのだ。
いわゆる普通の学校に通い、課題をこなし、放課後や休日は呪術師として活動している。
五条悟の妹というだけで心ない言葉をかけられることも、反対に、機嫌を取ろうと近づいてくる人もいる。
幼い頃から共にいる伏黒だが、それでもきっと彼の知らないところで苦労をし、彼の知らないところで努力をしている。
伏黒はかける言葉が見つからなかった。
「明日、高専集合だろ。早く寝ないと起きれないぞ。」
『私もそれだけが心配。ね、朝、電話してよ。』
「覚えてればな。」
『7時にね！』
続く
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作者名：こおりざとう | 作成日時：2022年1月24日 4時
