桜色 ページ10
放課後になった。
授業は問題なく乗り切り、昼休みは皆でお弁当の中身を交換し乍ら、お菓子を食べて。
今日のお菓子はシュークリームだった。上手く膨らまなくて……と恥ずかしそうに頬を掻いていたが、正直私には失敗したように見えなかった。普通に高品質だった。
リーダー格の子は、今日は高い位置で髪をポニーテールにしていた。何でも、可愛いリボンを買ったので、着けたかったらしい。
桜色のリボンが、茶色い髪によく合っていた。
もう1人の子は、今日は休みらしい。
昼休みに、電話でテレビ通話なるものをした。体調が悪そうで、無理はして欲しくなかったが、楽しそうだったので口に出すのはやめた。
──そして、放課後。
私は今、屋上に居る。手すりから僅かに身を乗り出し、街の風景を見ていた。
グラウンドでは部活動に励む生徒の姿があった。
そろそろだろうか。
後ろの方から、ガチャリという音が聞こえた。誰かがドアノブを回した音だ。
静かに振り返ると、そこには、私が今朝呼び出した子が立っていた。
私を真っ直ぐと見つめる瞳に光は無く、緩りと弧を描いた口が異様な雰囲気を醸し出している。
『ありがとう、来てくれて。』
私が笑うと、風が強く吹いた。
スカートがはためくのも気にせず、私は1歩、また1歩とその子に近づく。
手を伸ばせば触れられそうなほど近づいた時、その子がニコリと笑った。
そして、
「話ってなぁに?」
と怖いくらい冷たい声で尋ねてくる。
茶髪が揺れる。
この茶色は私のものか。はたまた、彼女のものか。
『もう検討付いてるんじゃないの……?』
室生犀星さん
私の問いかけに、室生さんの眉がピクリと動く。
冷えきった空気の中で、桜色のリボンだけが温かみを帯びていた。
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こおりざとう(プロフ) - れたすさん» コメントありがとうございます! ここから少しずつ、事件と篠原ちゃんの過去が明らかになっていきます。お楽しみに! (2017年4月11日 17時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
れたす(プロフ) - 最後のせりふっ!続きが気になる途切れ方……更新まってます! (2017年3月26日 22時) (レス) id: c8875f112f (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - 狂夜月さん» コメントありがとうございます! もう少し更新ペースを上げられるよう頑張りますね! (2017年2月26日 23時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
狂夜月(プロフ) - 面白いです!がんばってきださい! (2017年2月24日 21時) (レス) id: 0f9e6c0dce (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - みるふぃーゆ@怠惰Girl&Boyさん» コメントありがとうございます! 色々と想像しながら読んでみてください(笑) 更新頑張ります (2017年1月31日 19時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こおりざとう | 作成日時:2017年1月20日 23時