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〖中島said〗
「君はいったい何を……!」
『何って、見たままだよ?』
「これは全て、君が遣ったの?」
『うん、まあね。』
何とも思っていないような表情で、Aちゃんは淡々と答える。
色々と聞きたいことは有るし、色々と責めたいことも有るのに、上手く声にならない。
『敦君さあ、何で来たの。』
突然、彼女から声をかけてきた。
「鏡花ちゃんが、電話をかけて来たんだ……“助けて”って。」
『へえ。』
対して興味もなさそうにAちゃんは相槌を打つ。
「君は……何故こんな事をしたの?」
Aちゃんは真っ直ぐ僕を見つめてくる。
何も見ていなさそうで、全てを見ている────まるで太宰さんのような眼で。
やがてAちゃんは口元に三日月を描いた。
『私ねえ、大事なものとか“壊したく”なるんだあ。』
まるで幼稚園児のように、Aちゃんは笑顔で話す。
『好きなものとか、他人に壊される前に自分が壊しておきたいの。だからね、ほら。皆のこと大好きだから────壊しちゃった。』
「そんなのっ……じゃあ、僕が来た時に君が発した言葉は、どういう意味?」
何のことだか忘れた、そう云いたげに首を傾げるAちゃんに僕は続ける。
「何で来たのか、僕に聞いたよね。」
ーー嗚呼、あれね。
『折角、生きる希望とか意味とか見つけた敦君を殺しちゃ、可哀想かなって。ただそれだけ。』
「そっか……。」
ーーじゃあ、僕には生きる希望も意味も無くなったからさ、
「────殺してよ。」
僕の言葉に、Aちゃんは僅かに目を見開いた。
が、直ぐに笑顔を作り直す。
『後悔しても知らないよ。』
「後悔するのは君の方だよ。」
『私は後悔しない。』
「じゃあ、僕だって後悔しない。」
Aちゃんは、1歩、また1歩と僕に近づいてくる。
不思議と怖くなかった。Aちゃんに対する怒りもなかった。
────ただ、Aちゃんを独り遺してしまうという。若干の罪悪感だけあった。
『ねえ、敦君。』
包丁を高く掲げたAちゃんが、ポツリと言葉を溢す。
「なあに?」
『怖くないの。』
ーー怖くない。
こう答えようと思ったが、Aちゃんは僕の返事を聞かず、勢いのまま包丁を振り下ろした。
『Trick or Treat
お菓子くれなきゃ悪戯するぞ。』
最期に、Aちゃんの声が聞こえた気がした。
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こおりざとう(プロフ) - みるくてぃーさん» 確かにそちらの方が、後味も悪くなく(?)良い気がしますね…!次からは、もう少し幸せな終わり方を目指してみます。ありがとうございました。更新頑張ります! (2016年11月2日 21時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
みるくてぃー - どうせならハロウィン『…っていう夢を見たんだ。』敦「やめて」って感じの方が…!でも面白かったので良し!!更新頑張ってください! (2016年11月1日 0時) (レス) id: acf5ab12fc (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - 物部さん» 改めまして、物部さん。コメントありがとうございます!更新頑張ります!! (2016年10月30日 8時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - ネーム変更致しました。元サクヤの物部です_(._.)_改めて更新頑張って下さい! (2016年10月30日 0時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - 黒兎さん» フォローありがとうございます!!面白いと言われると、私のやる気が上がります(笑)文才は無いですが、無いなりに頑張っていきます。 (2016年8月19日 7時) (レス) id: 78284aef9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こおりざとう | 作成日時:2016年7月12日 22時