想造花 ページ35
事故があった場所では、先程までの騒ぎが嘘だったかのように誰も居なかった。
人は死んだ後、こんなにも簡単に忘れられてしまうのかと、少し心が痛くなった。
まあ私は、明日からもジサツに勤しむ心算だが。
『こんにちはー。』
「あら、Aちゃん。いらっしゃい。」
私が店に入ると、店長はニコニコ笑い乍ら迎え入れてくれた。
「はい、これ。花束。」
『ありがとうございます。済みません、いきなり無理云って……。』
「良いのよ良いのよ。ぶっちゃけると、この花“異能”で創り出した物だしね。」
“
これが店長の異能だ。言葉の通り、イメージで花を造りだす事が出来る。
然も、造りだした花は、受け取った人が忘れない限り枯れることはない。
まさに花屋を営む為に生まれてきたような人である。
…かなりの体力を使う為、1日に造れる数が決まっているのが唯一の欠点だ。
「その代わりと云っちゃあ悪いんだけど、」
『判ってます。ちゃんと伝えますよ、“忘れないで”って。』
「うん。流石はAちゃんだ。」
社長は笑顔のまま、私の頭をポンポンと軽く叩いた。
「さ、行っといで。」
『……? 何処へです?』
「おや? てっきり、その花束を渡す相手が居るんだとばかり思っていたんだけど……。」
『いや、違いま』
ーー違います。
こう云いかけた時、私の携帯が鳴った。
画面を見ると《乱歩さん》の文字。
私は一言断りをいれ、電話に出た。
『もしも』
「おっそーい。」
声に出来なかった“し”という文字が、空中を漂った気がした。
『……済みません。』
「ま、良いんだけどね。ところでAさぁ、今、何処?」
『店に居ますけど……。』
「あっそ。じゃあ、今から指定する場所に行ってね。」
じゃあね。と乱歩さんは電話を切ってしまった。
反論する権利すら与えて貰えず、どうしたら良いのか判らない私は、手元の携帯を見つめた。
すると、直ぐに乱歩さんからメールが来る。
……幸いにも、距離はそう離れていなかった。
私は一つため息を吐き、自分の鞄と花束を手に持った。
「大変だねえ。」
『良い人なんですけどね。何と云うか、自由で……。』
店長はケラケラと笑う。
「Aちゃんが自由人と、ねえ。時代の流れは読めないもんだわ。
……さ、行っといで。」
『行ってきます、店長。』
【ハロウィン企画】Trick or Treat お菓子くれなきゃ悪戯するぞ→←必要な混乱
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こおりざとう(プロフ) - みるくてぃーさん» 確かにそちらの方が、後味も悪くなく(?)良い気がしますね…!次からは、もう少し幸せな終わり方を目指してみます。ありがとうございました。更新頑張ります! (2016年11月2日 21時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
みるくてぃー - どうせならハロウィン『…っていう夢を見たんだ。』敦「やめて」って感じの方が…!でも面白かったので良し!!更新頑張ってください! (2016年11月1日 0時) (レス) id: acf5ab12fc (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - 物部さん» 改めまして、物部さん。コメントありがとうございます!更新頑張ります!! (2016年10月30日 8時) (レス) id: fb35e39608 (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - ネーム変更致しました。元サクヤの物部です_(._.)_改めて更新頑張って下さい! (2016年10月30日 0時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
こおりざとう(プロフ) - 黒兎さん» フォローありがとうございます!!面白いと言われると、私のやる気が上がります(笑)文才は無いですが、無いなりに頑張っていきます。 (2016年8月19日 7時) (レス) id: 78284aef9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こおりざとう | 作成日時:2016年7月12日 22時