【文豪ストレイドッグス】シにたがり少女の生く(いく)末は

約束、ですよ。 ページ29

小屋？アジト？に走って行った太宰さんを、私はゆっくり追いかけた。



中からは、

うわっ！本当に何もしてない!!てか、なんで正座してんの、この人達!!

という声が聞こえてきた。


元気だなあ……。




『太宰さーん、』

「ねえ、Aちゃん。彼等に何したの？」


『……ただ普通にお話しただけなんですけど、なんかこんな風になっちゃいました。』




ーーまた、死ねませんでした。


吐き捨てるように私が云うと、太宰さんはフッと笑い、私の頭を優しく撫でた。

他の人と違って、私のシにたがりを止めない太宰さんは、好きだなーっと思った。







「ああ、そうだ。軍警には私から連絡するから、Aちゃんは国木田君に連絡してくれない？」


『わかりました。』





私の返事を確認すると、太宰さんは建物から出て行った。




『……ねえ、』

私が徐に声をかけると、敵さんはビクッと肩を大きく跳ねさせた。


『流石に、そこまで驚かれると傷つくンだけど……。』



敵さんは何も云わない。



『私、出来れば軍警とは話したくないんだよ。

って訳で、聞かれた事には素直に答えてよね。』


敵さんは、声こそは発しないもののコクコクと勢いよく頷いた。


『約束、ですよ。』








私の言葉に、敵さんは酷く怯えていた。









『もしもー』

「A!!
怪我してないか!? 無事か!? 死んでないかっ!?」


『……何から突っ込めば良いですか？』





国木田さんに電話をかけると、何故か凄い勢いで色々聞いてきた。

一寸……厭、かなり怖い。



ーーほら国木田。一寸代わりな。

電話の向こうから、晶子先生の声が聞こえた。




「もしもし、Aかィ。」

『はい。ありがとうございます、晶子先生。』

「なァに、礼には及ばんよ。
あのままじゃ、Aが云いたいことを云う前に、国木田が電話を切ってしまいそうだったからねェ。」


『あぁ。』


「ところで……。Aが電話を掛けてきたということは、もう終わったのかい？

随分と早いんだねェ。潜入捜査の筈だろ？」


『ええ、まあ。』




私がこう答えると、晶子先生はふーんとキレの悪い返事をした。



「ま、いいや。

そういや、軍警への連絡は……流石の太宰もそれ位はするだろ。」



流石のって……。一寸、ほんの一寸だけ可哀想



「こっちは大丈夫だから、気を付けて帰って来るんだよ。」


『はい。』






優しい晶子先生の言葉に、心がじんわり暖かくなった。

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