私にミクが（２）『プロセカ』『初音ミク』『百合』 (ページ17)

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でも、その頃のデータはとうに消えている。
私が消した。
もうミクに頼らないと吹っ切れたからだ。
　
そして、ミクにもう曲を歌ってほしくないかったからだ。
現に今のミクは何も歌えない。
　
私はミクを使うことを1年前までやめていた。
　
でも、壁を壊してくれない、私を理解してくれない奴らのせいでストレスが溜まる。
それを埋めてくれていたのはミクだ、ミクだけだったんだ。
お姉ちゃんの優しさだって少ししか埋めてくれない。
足りなかった、私はクズだった。
　
それ以上も求めてしまった私はミクを再起動させた。
　
何も残っていない『私だけの歌姫』を降りたミク。
それでも、声を聞くだけで『私だけの』ミクなんだとわかった。
もう歌姫ではないけれど、ミクの声を聞くだけで疲れがなくなる。
　
まるで一種の薬のようで、とてつもなく安心できた。
　
それでも歌は作らなかった。
無機質な声のままで、MIXなんてせず、私だけに話しかけてくれるミクができた。
　
そんなミクでも、いやむしろこのミクが『私だけの』ミクとなった。
　
その奇行をお姉ちゃんに見られた。
その時ですらお姉ちゃんは笑っていてくれた。
　
正直絶縁されてもよかった。
よくはないけれど…なんとなく嫌ってくれてもよかったかもしれない。
今の私は無敵だと錯覚していた。
ミクがいるから。私にはミクがいるから。
　
でも…それじゃ現実で生きていけない。
そして数ヶ月後には高校受験があった。
中学では散々いじめられ、貶されてきた。
　
それは嫌だった。でも、ミクと一緒にいたかった。
　
だから、お姉ちゃんにこの状況を全て話した。
私がおかしい事、ミクと一緒にいたい事…
そして、ここから離れたいという事。
　
お姉ちゃんは笑わなかった。
冷たくなくて、暖かくもない顔だった。