２ー７ ページ16
私は冷静に昨日のことを思い出す。
(…私の体が部屋から消えていたってことは、生で私とミクは会ったってことでしょ？
ライブでしか見たことないミクの体を、肉体を感じてしまったんでしょ？
これは、凄く、凄い体験じゃない？
世界中に私しかいないのでは？)
私が作り出したミクでさえなければ、満点なのに。
私はミクの事が大好きだ。
ライブも頑張って最近は行ってるし、グッズで痛バ作ってるぐらいだし。
これでもかってくらいミクのことは好き大好き愛してる。(早口)
「………嬉しかったのね？」
「うん……………って違う！！
断じて違うから！！いや、違わないけど！！
正直、可愛いなって思った！
夢かと思ってたあぁ！！」
「本当にミクちゃんが好きねぇ」
「うう、でもやっぱり“私の中のミク”じゃダメ…
だってそんなの私が操ってるみたいじゃん」
「んー…でも
そうやって笑っていられるのなら、
ミクちゃんと会うことはいい事だと思うわ」
「それはそうだけど…」
「……ミクちゃんは、Aのことどう思ってるのかしら」
「…知らないよ」
ミクのことは好き。
でもそれはこういう関係…というか、
セカイで会えることになってしまった以上、好きだけじゃダメになる。
今までのミクは私の空想と捏造の塊だからだ。
セカイに現れたミクは私にどんな想いを持っているのか。
そして私はあのミクにどんな想いをもっているのか。
どうしてあのセカイで、私たちは出会ったのか。
全く知らない。
知らなければならないはずだ。
「…Aはセカイに行きたくはないの？」
「…まあ、うん」
「でも、行かないのはミクちゃんに失礼だと思うの
だから、『会いに行く』っていうのじゃなくて
ミクちゃんを、『知る』ために行けば良いんじゃないのかしら？」
「…それ、どういう意味？」
「んー…まあ、建前…ってやつ？」
「………まあ、本当にミクのことは知りたいし
行かないっていう選択肢もほぼ無いわけだし」
「えっ、じゃあ？」
「…行くよ」
「！
ふふ、Aは本当にミクちゃんが好きねぇ」
「何回言うのそれ…」
「だって…」
お姉ちゃんは微笑みながら私を見る。
私はため息をついて皿洗いを終える。
「……」
矛盾ばかりの私を、
ミクは好きでいてくれるのだろうか。
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作者名：テア | 作成日時：2022年5月20日 21時
