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side_Shintaro




目的地である海に着くと、

北斗は喜ぶことを通り越して感動していた。


砂浜に口を開けて立ち尽くし、

でも目だけはキラキラと輝かせる北斗。


「…どう?初めての海は」


北斗はバッとこちらを振り向き、

何かを伝えようとパクパクと口を動かすけれど、

正直、鯉のモノマネにしか見えない。


でも、嬉しそうなのは確かで、

俺はもうそれだけで満足だった。


「…っ、慎太郎!」


ようやく言語というものを思い出した北斗の声は、

今まで聞いたことがないほど嬉々としていた。


「ありがとう…俺、ずっと海見たくて…」


そういう北斗はだんだん涙目になっていって、

俺は笑いながら北斗を抱きしめる。


「泣くな泣くな」


「だって…」


「わかってる。嬉しいんでしょ?」


「そんなんじゃない、それ以上。

なんて言えばいいかわかんないけど…」


「そっか。じゃあ…海、入るか」


「えっ」


北斗から身体を離し、俺は海の方へ駆けだした。


俺も久しぶりの海だったから、

本当は少しだけ嬉しかったのかもしれない。


波打ち際に到達し、そっと海水に触れてみる。


すると追いついた北斗がそれを興味津々な顔で

ジーッと見つめてきた。


「触ってみ?」


「…うん」


北斗は若干震える手でほんの少し

海水に指を突っ込んだ。


そして安全を確認した北斗は

ゆっくりと手首くらいまで海水に浸す。


「どう?」


「冷たい」


「…えいっ」


「うわぁ!」


北斗があまりにも可愛い顔をするから、

つい俺はいじわるしたくなって、

北斗の顔に海水をパッとかけた。


「なにすんの慎太郎!」


「ハハハ、ごめんごめん」


「もー、濡れたじゃん」


「じゃあ…もっと濡れるか」


「へ?」


キョトン顔の北斗の腕を掴んで、俺は濡れること

なんて気にせずジャバジャバと海の中に入った。


腰辺りまで浸かる所まで来ると、

もはや服は服の役目を果たしていない。


それでも楽しくて、俺と北斗はずっと笑っていた。




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ま り ゅ 。(プロフ) - 会場にいました !! 面白かったです 、次回作もとても楽しみにしております ^ ^ (2019年5月3日 21時) (レス) id: 175c974560 (このIDを非表示/違反報告)
りほ(プロフ) - HARUTOを感じさせるところがたくさんあり、とても面白かったです!お疲れ様でした! (2019年5月2日 21時) (レス) id: 8fe4720d0e (このIDを非表示/違反報告)
あいたん(プロフ) - お疲れ様でした!とても楽しかったです。実は私も大阪でズドンしてました笑この作品の世界観がとても好きで、毎回更新を楽しみにしてました!次の作品も楽しみにしてます! (2019年5月2日 18時) (レス) id: 634aec9d51 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり。(プロフ) - いつも更新お疲れさまでした!こういう雰囲気の小説初めて読んだんですが見事にハマりました!私の好きなCPが両方入ってて更新される度に見るのが楽しみでした!次回の作品も楽しみに待ってます! (2019年5月2日 11時) (レス) id: 9dc82746ac (このIDを非表示/違反報告)
紅の三角#苺日和 - お疲れ様でした!!毎日の楽しみになっていた月華。前作から読んでいて、さいかさんの書き方そのままうつしたいぐらい好き…次作楽しみに待ってます♪ (2019年5月1日 23時) (レス) id: ccec864579 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さいか | 作成日時:2019年3月17日 18時

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