#24 ページ24
#24
side_Hokuto
朝早いおかげで村に人気はほぼほぼなかった。
「これからどうするの？」
「とりあえず隣町に行こうかな。
隣町になら馬車が来るからそれに乗ろう」
「…ばしゃ？」
「あー、馬車っていう乗り物。
馬を使って動かすの」
「馬？…あ！乗馬なら得意だよ。
たまに森に来てた馬に乗って遊んでたから」
「いや、馬には乗らないんだけど…まぁいいや。
とりあえず歩こう。少し距離あるけど、大丈夫？」
「うん」
初めて歩く道、初めてこの村の先の景色を知った。
それは大して変わらないのかもしれないけれど、
俺にはその景色は全てがいつもより大きく見えた。
そびえ立つ木々も、転がる石ころでさえも。
時折聞こえる鳥のさえずりにも
敏感に身体が反応する。
その度に慎太郎にピタリとくっついてしまう。
すると慎太郎は「大丈夫だよ」と肩抱き寄せて
守ってくれた。
しばらく歩くと自然が減り、
徐々に人の気配が近づいてくる。
俺は身構えてフードを深くかぶろうとした。
しかし、
それは慎太郎の手によって止められてしまう。
「北斗、これからは怯えることなんてないから」
「…でも」
「大丈夫。俺がいる」
慎太郎の瞳は真っ直ぐで、
この上ないほど心強く感じた。
俺は慎太郎を信じ、
フードからゆっくりと手を離す。
そして、辿り着いた町にひどく驚いた。
さっきまでいた村とは比べようもないほど
人が多く、賑わっている。
この世界にはこんなにも人間がいたのか…
そしてそこに、
俺に好奇の目を向ける人など誰もいない。
ボーッと立ち尽くしていると、
足元に軽く何かがあたった。
下を見ると、
どうやら小さな女の子がぶつかってきたようだ。
『ごめんねお兄ちゃん！』
「あ、いや…」
『これ！あげるから許して！』
「…えっ、あぁ…ありがと」
女の子は何やら黄色い棒状のものを俺に渡すと
その場から走り去り、少し離れたところにいる
子どもたちと合流してしまった。
「…慎太郎、これなに？」
「それはバナナっていう…たしか、南国の果物」
「…へぇ」
バナナという果物を手に、
たぶん俺の顔はニヤついていた。
初めて触れる優しい世界が、
あまりにも美しかったから。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 667人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ま り ゅ 。(プロフ) - 会場にいました !! 面白かったです 、次回作もとても楽しみにしております ^ ^ (2019年5月3日 21時) (
レス) id: 175c974560 (このIDを非表示/違反報告)
りほ(プロフ) - HARUTOを感じさせるところがたくさんあり、とても面白かったです！お疲れ様でした！ (2019年5月2日 21時) (レス) id: 8fe4720d0e (このIDを非表示/違反報告)
あいたん(プロフ) - お疲れ様でした！とても楽しかったです。実は私も大阪でズドンしてました笑この作品の世界観がとても好きで、毎回更新を楽しみにしてました！次の作品も楽しみにしてます！ (2019年5月2日 18時) (レス) id: 634aec9d51 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり｡(プロフ) - いつも更新お疲れさまでした！こういう雰囲気の小説初めて読んだんですが見事にハマりました！私の好きなCPが両方入ってて更新される度に見るのが楽しみでした！次回の作品も楽しみに待ってます！ (2019年5月2日 11時) (レス) id: 9dc82746ac (このIDを非表示/違反報告)
紅の三角#苺日和 - お疲れ様でした!!毎日の楽しみになっていた月華。前作から読んでいて、さいかさんの書き方そのままうつしたいぐらい好き…次作楽しみに待ってます♪ (2019年5月1日 23時) (レス) id: ccec864579 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さいか
| 作成日時：2019年3月17日 18時
