月華

#22 ページ22

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side_Hokuto




いつの間にか雨は止んでいて、

それでも俺らはこの場から動こうとはしなかった。


これからどうすればいいのかがわからなかった。


「…あ、虹だ」


なんとなく空を見上げると、

虹が青い空に見事なアーチを描いている。


「ほんとだ、綺麗…」


「虹の麓ってどこにあるの？」


「…さぁ、俺も麓は見たことないな」


世界のことならなんでも知ってると

思っていたけど、

慎太郎にも知らないことがあるんだ…


「北斗」


そんなことを思っていると、

急に慎太郎が真剣な声で俺の名前を呼んだ。


「俺と一緒にこの森を出よう」


「え…？」


「それで、一緒に虹の麓を見に行こう。

それだけじゃなくて…

他にも、たくさん北斗と見たい景色があるんだ」


森と村だけしか知らない俺にとって、

それは夢のような世界だった。


慎太郎と一緒なら、

俺のモノクロの世界が鮮やかに彩られる。


そう考えただけで俺の世界は少しだけ

色付いた気がして、

俺は考える前に慎太郎の手を握っていた。


「行きたい。慎太郎と同じ世界を…見てみたい」


俺は、慎太郎を選んだ。


そしてそれは、大我を裏切るということでもある。


そんな覚悟、本当はないけど…でも、

目の前に差し伸べられた慎太郎の手を

掴まずにはいられなかった。




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