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#13




side_Hokuto




「…北斗は、この森に住んでるの?」


「…そうだけど」


「ひとりで?」


「…違う、ひとりじゃない」


「へー、そうなんだ」


慎太郎の声は、優しかった。


大我とは少し違った優しさがある…気がする。


「家族?」


「家族…じゃないけど、大切な人」


「大切な人…かぁ、なんかいいね」


「…すごく、綺麗な人なんだ」


なぜだろう…"会話"ができてしまう。


別に話さなくてもいいことが、

自然と口からこぼれおちてしまう。


「北斗も、綺麗だよ」


「…え?」


慎太郎の思いもよらないその言葉に反射的に

顔を上げると、慎太郎の姿が木の影から現れた。


慎太郎は俺の隣に座り直し、

俺の顔をじっと見つめてくる。


恥ずかしくて目を逸らすと、

俺の頬が慎太郎の手に包み込まれた。


「…すごく綺麗な目」


慎太郎があまりにも真剣な顔で

そんなことを言うから、

俺も慎太郎の顔をじっと見つめてしまう。


初めてちゃんと見る慎太郎の顔は、

息を呑むほど凛々しくて、

大我とは違う…というか、

むしろ正反対の美を持っていることに気がついた。


見つめ合ったまま、

時が止まったかのように錯覚してしまいながら、

それでも心臓は忙しく脈を打つ。


目を離すタイミングなんてわからなくて、

できれば、もう少しこのまま見つめていたい…

なんてことも考えてしまっていた。


「北斗」


慎太郎は俺の名前を呼ぶと、

そっと俺を抱きしめた。


慎太郎の肩に顔が埋まり、

いい香りにふんわり包まれる。


俺の手はゆっくりと慎太郎の背に回り、

抱きしめ返そうと動く。


しかしその瞬間、脳裏に大我の顔が浮かび、

俺の手はそれ以上動けなくなった。


「…ごめん、帰らなきゃ」


「…うん、ごめんね急にこんなこと……」


慎太郎は俺から離れ、悲しそうな顔をした。


「…また、来ても……いいから」


自分でも、

なんでそんなことを言ったのかはわからない。


でも、

それを聞いた慎太郎の顔が明るくなったのを

見たおかげで、後悔はしなかった。




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ま り ゅ 。(プロフ) - 会場にいました !! 面白かったです 、次回作もとても楽しみにしております ^ ^ (2019年5月3日 21時) (レス) id: 175c974560 (このIDを非表示/違反報告)
りほ(プロフ) - HARUTOを感じさせるところがたくさんあり、とても面白かったです!お疲れ様でした! (2019年5月2日 21時) (レス) id: 8fe4720d0e (このIDを非表示/違反報告)
あいたん(プロフ) - お疲れ様でした!とても楽しかったです。実は私も大阪でズドンしてました笑この作品の世界観がとても好きで、毎回更新を楽しみにしてました!次の作品も楽しみにしてます! (2019年5月2日 18時) (レス) id: 634aec9d51 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり。(プロフ) - いつも更新お疲れさまでした!こういう雰囲気の小説初めて読んだんですが見事にハマりました!私の好きなCPが両方入ってて更新される度に見るのが楽しみでした!次回の作品も楽しみに待ってます! (2019年5月2日 11時) (レス) id: 9dc82746ac (このIDを非表示/違反報告)
紅の三角#苺日和 - お疲れ様でした!!毎日の楽しみになっていた月華。前作から読んでいて、さいかさんの書き方そのままうつしたいぐらい好き…次作楽しみに待ってます♪ (2019年5月1日 23時) (レス) id: ccec864579 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さいか | 作成日時:2019年3月17日 18時

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