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side_Taiga




取り乱しながら帰ってきた北斗を抱きしめた瞬間、

彼から他の人間の匂いがした。


それは、北斗に何者かが近づいた証拠。


俺の心がざわめいた。


森の中で北斗を見つけた時、

俺は天使に出会ったのだと思った。


人間の子どもなんて大したご馳走でもないのに、

俺は手を出した。


そして、

殺すこともできずに今日まで育ててしまった。


いつの間にかこんなに大きくなった北斗は、

驚くほどの美男子になり、決して離したくない

俺の唯一の宝物。


何千年と生きてきて、

俺は初めてそんな存在を手に入れた。


しかし、大切になればなるほど、

北斗がいつか俺から離れていってしまうのでは

ないかと怖くなる。


小さい時は俺がいないと生きていけなかったが、

今ではもうひとりで森を抜け、

村にも簡単に行ける。


ここから…俺から、

逃げようと思えばすぐに逃げられる。


だから俺は、まるで洗脳するように俺の存在を

北斗の心に埋め込んだ。


俺がいないと生きていけないんだ…と。


これが正しいことなのか、間違っていることなのか

吸血鬼の俺にはわからない。


人間としての幸せを北斗から奪う代わりに、

俺はそれ以上の幸せを北斗に与えているつもりだ。


自然の中での自由、豪邸での暮らし…


「大我」


「ん、なに?」


「…これ」


「あぁ、貸して」


北斗は少し悲しそうな顔で俺に枯れたユリの花を

差し出してきた。


それを受け取り、俺がそっと優しく包み込むと

ユリの花は再び咲き誇った。


「はい、どうぞ」


「ありがとう」


北斗はそのユリの花を嬉しそうに受け取り、

花瓶に挿した。


北斗は心優しいから、

花が枯れることですら悲しむ。


だから俺はこの能力…命果てたものに再び命を

吹き込むことができる能力を、北斗のためなら

喜んで使った。


きっと、俺の吸血鬼としてのこの能力は、

北斗を笑顔にするために授けられたのだ。




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ま り ゅ 。(プロフ) - 会場にいました !! 面白かったです 、次回作もとても楽しみにしております ^ ^ (2019年5月3日 21時) (レス) id: 175c974560 (このIDを非表示/違反報告)
りほ(プロフ) - HARUTOを感じさせるところがたくさんあり、とても面白かったです!お疲れ様でした! (2019年5月2日 21時) (レス) id: 8fe4720d0e (このIDを非表示/違反報告)
あいたん(プロフ) - お疲れ様でした!とても楽しかったです。実は私も大阪でズドンしてました笑この作品の世界観がとても好きで、毎回更新を楽しみにしてました!次の作品も楽しみにしてます! (2019年5月2日 18時) (レス) id: 634aec9d51 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり。(プロフ) - いつも更新お疲れさまでした!こういう雰囲気の小説初めて読んだんですが見事にハマりました!私の好きなCPが両方入ってて更新される度に見るのが楽しみでした!次回の作品も楽しみに待ってます! (2019年5月2日 11時) (レス) id: 9dc82746ac (このIDを非表示/違反報告)
紅の三角#苺日和 - お疲れ様でした!!毎日の楽しみになっていた月華。前作から読んでいて、さいかさんの書き方そのままうつしたいぐらい好き…次作楽しみに待ってます♪ (2019年5月1日 23時) (レス) id: ccec864579 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さいか | 作成日時:2019年3月17日 18時

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