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side_Hokuto




気がつけば、俺はひとり暗闇の中に佇んでいた。


「…慎太郎?」


何も見えない、何も聞こえない。


虚無の中に放り込まれたような感覚に、

俺は恐怖に蝕まれてゆく。


「大丈夫だよ」と、「俺がいる」と言ってくれた

慎太郎もどこにもいない。


これじゃ本当に、俺はひとりぼっちだ。


「…なんで」


そして、こんな時に俺の頭に過るのは…


「……大我」


暗闇に光を運ぶ、美しいあの人。


俺が裏切った…最愛の人。


「…大我、大我!!!」


そして、最後の俺の声はあまりにも生々しく、

俺の瞳は覚醒するかのように開かれた。


そしてようやく、

今までの光景が夢だったのだと気がついた。


「…北斗?」


隣で慎太郎が寝ぼけ眼を擦りながら顔を覗かせる。


でも俺は、慎太郎と目を合わせられなかった。


夢の中で今、俺は確かに大我を求めた。


慎太郎ではなく…


「…北斗、おいで」


慎太郎の優しく柔らかなその呼び掛けに甘えて、

俺は自分の布団を出て慎太郎の横にピタリと

くっついて寝転がった。


すると慎太郎は俺を抱き枕のように

ギューッと抱きしめる。


慎太郎の匂いと体温は、

まるで何かの薬のように俺の心を落ち着かせた。


「…慎太郎」


「なに?」


「……好き」


「…どした、急に」


「大好き」


それは、どこか自分に言い聞かせるような台詞。


そして、

慎太郎の心を引き留める俺が持つ最大限の術。




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ま り ゅ 。(プロフ) - 会場にいました !! 面白かったです 、次回作もとても楽しみにしております ^ ^ (2019年5月3日 21時) (レス) id: 175c974560 (このIDを非表示/違反報告)
りほ(プロフ) - HARUTOを感じさせるところがたくさんあり、とても面白かったです!お疲れ様でした! (2019年5月2日 21時) (レス) id: 8fe4720d0e (このIDを非表示/違反報告)
あいたん(プロフ) - お疲れ様でした!とても楽しかったです。実は私も大阪でズドンしてました笑この作品の世界観がとても好きで、毎回更新を楽しみにしてました!次の作品も楽しみにしてます! (2019年5月2日 18時) (レス) id: 634aec9d51 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり。(プロフ) - いつも更新お疲れさまでした!こういう雰囲気の小説初めて読んだんですが見事にハマりました!私の好きなCPが両方入ってて更新される度に見るのが楽しみでした!次回の作品も楽しみに待ってます! (2019年5月2日 11時) (レス) id: 9dc82746ac (このIDを非表示/違反報告)
紅の三角#苺日和 - お疲れ様でした!!毎日の楽しみになっていた月華。前作から読んでいて、さいかさんの書き方そのままうつしたいぐらい好き…次作楽しみに待ってます♪ (2019年5月1日 23時) (レス) id: ccec864579 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さいか | 作成日時:2019年3月17日 18時

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