6 ページ7
オーエンはミスラとAを見つめ、その色違いの瞳をいやらしく細めた。
この時のオーエンは大抵悪いことを考えている。それを、Aは知っていた。
｢それにしても、いつまでお人形さんごっこしてるの？見ていて滑稽だよ｣
｢はあ｣
しかし、ミスラはオーエンの言葉に無感情に相槌を打つ。オーエンの言葉が全く響いてないのだろう。それに対して、オーエンは不快そうに眉を顰めた。
ミスラに至ってはAの首から飛び出た綿を少し気にしているようだ。やっちゃったなー、面倒だなー、と思っているのだろう。言葉にせずとも、目を見れば分かる。
｢お人形さんって言ったってね、私も元は人間だからね！｣
｢だからこそおかしいんでしょ｣
｢え、そうなの？｣
｢ぬいぐるみにされた人間なんて聞いたことないよ。それを当たり前のように受け入れた危機管理能力のない能天気にも程がある人間もきっと君が初めてだ｣
｢そ、そうかなあ｣
てへへ、と笑う。
短い手で頭の後ろをもじもじとかいてると、オーエンはまたいやそうに顔を引き攣らせた。
｢別に褒めてないんだけど｣
｢そうなの？でも、初めてってなんかすごくない？！｣
｢………｣
｢なんで黙るのさー！オーエン｣
オーエンは胡散臭げな目でクマのぬいぐるみを見つめる。
彼にそんな目で見られるのは何だか解せなかった。
｢ミスラは凄いな。こんなのと一緒にいて疲れないの？僕は5分も保たないな。すぐにケルベロスの餌にする｣
｢ヒエッ！｣
Aはぴゃっとミスラの首元に抱きついた。
やはりこの男は怖い。
何がって、その薄い唇から吐き出される物騒な言葉が、本当に実現されそうなところがだ。
｢そうそう。君はそうやって小動物のようにビクビクしているのがお似合いだよ｣
ガタガタと震えるAを見て、オーエンは満足気に笑った。
不機嫌になったかと思えば、上機嫌になったり。魔法使いというものは随分と気分屋のようだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あいねこ - 最高です。キャラクターとの関係性が素敵すぎます！素敵なお話をありがとうございます。更新楽しみにしております。 (2021年4月19日 2時) (
レス) id: 650a36dc0f (このIDを非表示/違反報告)
藤李 - ぬいぐるみが主人公とは珍しいですね！とっても面白かったです！続き待ってます！o(*ﾟ∀ﾟ*)o (2020年4月14日 19時) (レス) id: b71c5bc041 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星子 | 作成日時：2020年2月29日 2時
