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｢何がダメなの？｣
｢眠れないんですよ｣
｢え、もしかして、帰ってから寝てない？｣
｢そうですね｣
｢ええっ！！｣
ミスラはくわっと欠伸をこぼす。
潤んだエメラルドグリーンの瞳は何処かぼんやりとしていた。
身体は睡眠を欲しているのだろう。
だいぶ眠そうだ。
でも、眠りにつけない。
そんな矛盾が、苦しそうに見えた。
｢今回の＜大いなる厄災＞はいつもと違ってたもんね。その影響かな？｣
｢一理ありますね｣
｢魔法は？魔法使って眠っちゃえばいいんじゃない？｣
｢気絶する魔法、強制的に眠りに入る魔法、昨夜色々試しましたが無理でした｣
｢ええ…｣
困惑するAを置いて、ミスラは横たえていた体を起き上がらせる。
ふう、とため息をついて、気だるげに体を伸ばした。
そんな彼の膝元にAはぴょんっと乗っかかる。
｢子守唄でも歌おっか？｣
｢今はいいです。お腹が空きました｣
黒く塗られたミスラの爪がAの額を弾く。
痛い、と短い手で額を抑えれば、頭上から｢アルシム｣という呪文が聞こえた。
｢わわっ！｣
すると、溢れていた綿は中に戻り、破れた布は修復されていくのを感じた。
とれてしまった目も再び元の位置に戻り、首に巻いてあるリボンの形も綺麗に整えられる。
身体中に染み付いていた汚れやホコリも綺麗にとれて、可愛らしいくまのぬいぐるみへとAは戻ることができた。
｢ありがとう、ミスラ！｣
｢どうも。……行きますよ｣
｢うん！｣
食べ物を探しに外に出るのだろう。
Aはいつものようにミスラの右肩に飛び乗った。
いつもの日常に戻ったと安堵していたこの時のAは、ミスラの"眠れない"という言葉をそこまで気に止めていなかった。
もしかすると＜大いなる厄災＞の影響かもしれないと思っていたが、ミスラなら大丈夫だろうと何処か楽観視していたのだ。
その考えが甘かったと後悔したのはすぐあとの事。
ミスラは＜大いなる厄災＞の日から、ずっと眠れなくなってしまったのだ。
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あいねこ - 最高です。キャラクターとの関係性が素敵すぎます！素敵なお話をありがとうございます。更新楽しみにしております。 (2021年4月19日 2時) (
レス) id: 650a36dc0f (このIDを非表示/違反報告)
藤李 - ぬいぐるみが主人公とは珍しいですね！とっても面白かったです！続き待ってます！o(*ﾟ∀ﾟ*)o (2020年4月14日 19時) (レス) id: b71c5bc041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星子 | 作成日時：2020年2月29日 2時
