何も言わせず、春。 ページ9
私の手を離してくれない。
君のマジな顔はかなり見てきた。
真剣にクイズをしたり、分からない英語の単語を調べたり、パワプロ育成したり。
今も同じ顔をしている。
言いにくくてそんな顔させてるのかな、私。
「……やっぱり怒ってる？」
「怒ってない」
「じゃあ話って…？」
伊沢くんは手を離して頭を掻く。
少し表情が明るくなってきた。
「言おうと思ったけどソレは追々話すわ」
「勿体ぶるつもり！？」
「別にそんなんじゃないけど。あと俺明日オフだからAさんも休みでしょ？空けといて」
「えっ？何で休み知ってんの？てか明日は新しい洗濯機見に行く予定が…」
「俺と洗濯機、どっちが大事なわけ？」
いつから私に対して意地悪な態度取るようになったのかな？
身長だってあっという間に越されたし。
見下ろされてる感ハンパない。
「それは洗ta」
「俺だよね？」
「言ってないからっ」
「明日、車借りてからAさん迎えに行くから準備しといて。じゃあ動画撮影あるから俺行くわ」
「ちょ、まっ」
私の静止を聞かずにリビングの方へ戻っていってしまった。
テレビの伊沢くんじゃない。
あれはたまに出現してくる悪伊沢ではないか。
２９歳が年下にリードされてるこの現象、名前があったら教えて欲しいです。
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作者名：*ゆ う* | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月7日 10時
