私の恋人になったよ。 ページ43
伊沢くんと正式な恋人関係になってから暫く経った。
一緒にお墓参りしに行こうねと約束してからやっとの思いで休みが取れた。
「仕事、やっぱり大変そうだね。体調崩してない？」
「大丈夫。俺はAさんを守るために筋トレしてるんだから」
「エイプリルフールは過ぎたよ、伊沢くん」
「もう５月だもんなぁ。この日に休みが取れたってこと、やっぱり運命感じない？」
「特には。別にお父さんたちの命日でもないしね」
分かってる。
今日は５月９日、母の日。
私の両親はこの日ではないが交通事故で亡くなっている。
天涯孤独になってから干支も一周してしまったみたい。
もう少ししたら親と過ごした年月より天涯孤独になって過ごした時間の方が長くなると思う。
でも独りではなく、隣には伊沢くんが居てくれる。
毎日会えるわけじゃない、たった一人の好きな人。
私のことを好きだと言ってくれた。
私の気持ちも変えてくれた。
独りでいようって決めつけていたのに、伊沢くんが手を差し伸べてくれた。
敵わないよね。
私が伊沢くんを育ててあげるって言ったくせに、逆に色んなことを伊沢くんから学んだ気がする。
伊沢くんと私は今、両親が眠っているお墓の前にいる。
お花を添えて線香を立てて。
お父さんが嗜んでいたお酒とお母さんが好きだった甘いお菓子を置いた。
２人で並んで静かに手を合わす。
お父さん、私の隣にいる男性は伊沢さんとこの息子さんの拓司くんだよ？
大きくなったでしょ？
お母さん、弟みたいに可愛がっていた拓司くん。
今私の恋人になったよ。
私のことを大事にしてくれてる。
こんな２９歳の独り身をさ。
アラサーだからって言うといつも叱られるよ。
そんなの関係ねーからって。
「Aさん。俺、Aさんの両親にちゃんと言うから。だから隣で聞いてて」
「うん」
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作者名：*ゆ う* | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月7日 10時
