会いたくなって。 ページ32
テレビ局の前まで来てしまった。
無意識だったと言えれば恋物語の始まりなのだが、生憎私は意識を持ってここまで来てしまった。
ファンの子が来ているかと思っていたけど、伊沢くんはこの時間にここで収録していることは言っていない為ポツンと立っているのは私は一人。
警備員さんに怪しまれないように距離を取って待ち合わせをしているフリをする。
テレビ局前で待ち合わせって有り得ないことだと思うけど。
30分くらい経ってから伊沢くんからメッセージが届いた。
『今仕事終わったから帰る。Aさんもゆっくり休んでね。』
まさかここに私が来ているとも知らないで。
メリーさんみたいに今貴方の近くにいるのって言ったら驚くだろうな。
だから敢えて返事はしない。
伊沢くんにとって嬉しいサプライズになるのか、それとも危ないファンの一人に見えてしまうのかどちらになるのか怖い。
遠くから見えてきたのは伊沢くんではない人。
目で探して後ろの方から一人で局を出てくる彼。
まーたあのお気に入りの服を着ているから一発で分かるよ。
私の存在に気づいたのか伊沢くんがこっちに振り向く。
私は小さく手を振る。
走って私の方に向かってくる。
「Aさんっ、なんでこんなところに?」
「なんか伊沢くんに会いたくなって」
「…俺を待っててくれたの?」
「…うん、そうかもしれない…」
マスクを外して抱き締めてくれる。
警備員さん見てるから。
恥ずかしいよ。
.
309人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:*ゆ う* | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月7日 10時