わがまま言わないの！ ページ4
私が高校最後の年になり、頑張って勉強して臨んだ学校事務員の採用試験に内定出来た。
先生はしつこく大学進学を薦めてきたけど無視です。
東大や早稲田行くくらいなら働きますから。
「内定おめでとうございます、Aさん」
「これで私も自立出来るね！ん？どした、拓司くん」
「…この家から出て行くんですか？俺、またひとりになっちゃうんですか？」
「拓司くん？」
「そんなの嫌です！一緒に勉強したり、クイズしたり、ゲームしたり、お風呂は一緒には入ってないけど…」
「何を妄想してるんだい？」
「ここから通えば良いじゃないですか！採用された早稲田大学高等学院？だっけ…？通えるでしょ？」
「あそこにはちゃんと職員官舎みたいなのがあるから、そこに住んだ方が通勤楽なのよ。分かって、拓司くん」
壁の方を向いて鼻をすする。
泣いてるのか。
私も泣きたくなるじゃんか。
「拓司くん、何も一生会えないってわけじゃないんだから。たまには帰ってくるから」
私の帰る場所はここだ。
良くしてくれる方に支えられて。
可愛くて生意気な弟みたいな拓司くんもいて。
「俺のことずっと見ててくれる…？俺をちゃんと面倒見てくれる…？」
振り向いた拓司くんの目は少し赤くなっていた。
「見てるよ、ずっと。今度は私が拓司くんを育ててあげる」
「３つしか歳違うのに」
「拓司くんが面倒見てって言ったんじゃん」
「確かにそうとも言う」
私は伊沢家を出て学校の事務員として働き出した。
その後、拓司くんとは休みの日に会ってはクイズに付き合わされて疲れる日々。
そして２０２１年春。
私たちの物語は動き出そうとしていた。
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作者名：*ゆ う* | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月7日 10時
