似た者親子だなぁ。 ページ18
抱き締められたりとかはない。
そんなドラマみたいな展開もないし、頭の中でめちゃくちゃ良いイントロが流れてくるわけでもない。
もう大人になってしまったのに、子どもみたいな顔するんだから。
私は目を見開いてポンコツみたい。
「……それは、どうも」
「俺の誕生日だって覚えてくれてるでしょ?Aさんなら」
「それは自分の誕生日と近いからであって…てか、拓司くんの誕生日くらい覚えてるから!普通に!」
何言ってんだかって小さく呟いたのを見逃さなかった。
やっぱりちょっとネジ緩くなってるんじゃない?
「自然に"拓司くん"って呼んでくれるじゃん。さっき母さんには"伊沢くん"とか言ってたのに。俺、期待しちゃって良いの…?」
「アラサーを揶揄ってんの?」
「揶揄ってないよ。Aさんは超が付くほどの鈍感だって知ってるから本音言ってるだけだし」
顔が火照る。
メガネを掛けていたら間違いなく曇っていただろうな。
「……お嫁さんだなんて、そんな可愛いフレーズ私には似合わないよ…」
「俺が似合うと思ってるから、それで良いんじゃないかな?」
「…っ、バカなんじゃないかな、拓司くん」
「バカでもアホでもない。俺は昔からずっとAさんが好き。だから、俺のお嫁さんになって?」
伊沢さんみたいに私の手を包み込む。
そうしたかと思うと握り締めてくる。
抱き締めるなんて出来ないから、手で我慢してくれてるの、かな?
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作者名:*ゆ う* | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月7日 10時