【QK】私は社長の育てかたを間違ってしまったらしい。【izw】 (ページ16)

今日:16 hit、昨日:4 hit、合計:115,301 hit

好きとか嫌いとかではなくて。ページ16

「な、なにを仰っているんですか、伊沢さん…？」

「だから、拓司のお嫁さんに…」
「ちょ、ちょっとタンマです！ど、どうしてそんなこと言うんですか！？私と伊沢くんは…」

「拓司のこと、伊沢くんって呼んでるの…？」

やってしまったと思って口元を手で隠す。
つい苗字で呼んでしまった。

「特に深い意味は無いんですよ？お互いなんていうか、大人になったので下の名前に君付けはどうかと思って」

「拓司のこと、好きじゃない？」

伊沢さんが膝の上に置いてある私の手を包み込む。
聞かれている内容は理解出来る。
それほどバカじゃない。

私にとって彼は弟みたいな存在で、昔はよく勉強を教えていたりしていた。
今もその気持ちは存在している。
だけど少し男を感じている自分もいることに気が付き始めている。

このまま突っ走ったら後に引けなくなる、そんな気がしてるから私は弟ということにして押し殺してるんだ。

「伊沢くんは、好きですよ？」

「男としてどう？うちの拓司」

「伊沢くんのことは…」

私が言いかけた時に背後に微かな気配を感じて振り向く。
そこには伊沢くんが身を潜めるように立っていた。

「い、拓司くん…」

「話、続けて。俺も聞きたいから」

「私はコーヒーでも用意してくるわね」

伊沢さんがソファーから離れる。
伊沢くんと２人っきりになる。

「……Aさんは、俺のお嫁さんになってくれないの…？」

２９歳の春がすぐそこにやって来てる気がした。

.