社長出勤…? ページ11
約束の10時を過ぎた。
まだ風が少し冷たい中、就職して以来ずっと住んでいる官舎の近くで待つ。
時間通り来るとは思ってないからギリギリに出て来て良かったわ。
「ったく、自分からこの時間に来るって言ったのに」
運転中だろうからメッセージを送ることはせずにひたすら待つ。
約束の時間から20分経った頃に車が私の前で止まった。
「ごめん、待った?」
「待ったよ、待った!何十回人狼将棋プレイしたことか!」
「インストールしてんの?ありがと」
ありがとうと言われて何となく怒りをぶつける気も失せてしまった。
窓を開けてサングラスをしている伊沢くんに違和感を覚えながらも助手席に乗る。
「さて、今日はどこに行く気なの?」
「実家。母さんがたまには2人で帰ってきなさいって」
それであの時言いにくかったのか。
でもあそこにいた人大体知ってるんじゃないっけ。
私と伊沢くんが昔からの知り合いでひとつ屋根の下で暮らしたこと。
「伊沢さんが呼んでるなら行くしかないか。あっ、お土産何も無いんだけど、乳酸菌飲料しか今持ってきてないし」
「なんでそれ持ってきてんの??」
伊沢くんはいらないと言うので仕方ないから私が2本飲むことに。
今日これで何本目なんだろ。
「気をつけてよ、運転」
「分かってるって。母さんみたいなこと言わないの」
「お姉ちゃんって呼びなさい」
「はい、Aお姉ちゃん」
「気持ち悪いから、Aさんで良いや」
「気持ち悪いとか言うなし」
私たちは伊沢くんの運転で実家へ向かうことにした。
途中でいらないと思ったけど、私が大好きな東京バナナを買ってね。
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作者名:*ゆ う* | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月7日 10時