熱が下がったらな。 ページ30
少し強引だったかもしれないと自分ではよく分かっているつもりだ。
でも簡単に引き下がる僕でもない。
目の前で倒れそうなくらい体調が悪いAを置いていけるわけないだろ。
帰るわけもないけどさ。
部屋の中に入ると何故か飾られている群馬のマスコットキャラクターのぬいぐるみ。
高校生の頃だろうか、こうちゃんと一緒に写っている写真立てが置いてあった。
コトン、とノールックで写真立てを伏せとく。
これは嫉妬ではない。
「河村さん、なんで写真立て直してくださいよ。大事なんですから」
「あ、そうなの？へー」
「だから直してくださいってば」
「はいはい。安静にしておきましょうねー」
Aをベッドに寝かせてから横に座り込む。
Aに背を向けてしまっている。
だって僕、とてもニヤついてるから。
こんな顔、見られたくないから。
「……河村さん…」
「ん？辛いか？」
「顔…見せてくれませんか…？」
一気に発火してしまいそうだった。
Aが、僕なんかの顔を見たがっている…！？
「こんな顔で良ければ」
振り返って枕元に顔を乗せてみる。
Aの顔がとても近い。
僕から近づいたんだけどさ。
これは照れてしまうな。
「……河村さん…、何で私なんかの事……好きになってくれたんですか？」
「そんなこと考えて発熱したのか？バカか、お前」
「そうやって誤魔化すんだから」
「話せば長くなる。一回寝ろ」
「眠ったら…話してくれます……？」
「……熱が下がったらな」
僕がAを好きになった理由は治ったら教えてやるから、だから今はゆっくり休めよな。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 191人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：*ゆ う* | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月22日 20時
