知らないよ。 ページ25
少し黙ってろ、と言われてから何だか時間が止まった気がした。
唇に柔らかい感触が…、なんて乙女な気持ちを抱く前にくっついてきた河村さんの胸を軽く押して離す。
そして気がつくと私は河村さんの白いほっぺたに平手打ちを食らわせていた。
だって！だって！！
この人いきなりキ、キスしてきたんだから…ッ！
「な、何するんですか！？」
「いたた……今まで後輩にもぶたれたことないのに」
「あんたは機動戦士か！？」
こんな状況でも河村さんらしいなぁと思ってしまったけど絶対に許してやらないんだから！
告白とかされて付き合い始めてするならまだしも、何も言われてないのにこんなことするだなんて…
でも平手打ちしてしまった右手が痛い。
これは私の心の痛みかもしれない。
河村さん、私驚いただけだから……ごめんなさい、ぶったりして。
「ごめん…軽率な行動だった」
「いえ…私こそ平手打ちをしてしまってすみません…」
「僕の気持ちは分かって貰えたと思うから。つまりそういう事だから。スグにどうこうしたいってわけじゃないから」
河村さんは立ち上がって私から離れようとしていた。
そんなの私が許さない。
気がつくと私は河村さんの腕を掴んでいた。
「そんなことされると期待するんだけど」
「キスの事謝るなら私から離れないで下さい。これは私の命令です…！」
「…！？A、お前面白いこと言うなぁ。先輩が後輩の言うことに従えってか？」
河村さんはいつものように不敵な笑みを浮かべている。
これは私の好きな河村拓哉。
「後輩に二言はありませんので！」
「誰がAから離れるものか…っ」
周りの視線なんて気にしないで先輩は私に抱きついてくる。
こんな先輩知らない。
知らないよ、こんなにあったかい河村さん。
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作者名：*ゆ う* | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月22日 20時
