頼られている自分。 ページ30
Aさんの熱を測ると38.5℃ある。
意識が朦朧としているのかあんまり聞いたことない甘えた声を発する。
「知恵熱ですかね…喉も痛くないし、咳もでないので。福良さん、もう一度熱測ってくれませんか…？」
Aさんは今測定した結果に納得がいかないみたいだ。
非接触型の体温計は信用出来ないと言うから脇の下で測定する体温計を持ってくる。
「はい、持ってきたから測ろうか」
「……福良さんが入れてください」
「え？」
「私の脇の下に体温計、入れてください…」
Aさんの目が蕩けている。
いや、高熱のせいで自制心が効かないんだな。
「…わかった。ちょっと、ごめんね？」
パジャマのボタンを上から２番目まで外す。
脇の下に体温計を入れようとするが触ってはいけない部分にも当たってしまった。
わざとじゃないんです、ごめんなさい。
「ごめん」
「何を謝ってるんですか？」
Aさんは気づいていないみたい。
ちょっぴり得した気分になったのは、男なんだから許して欲しい。
「うーん。こっちも大体同じくらいだよ？このまま横になって休んでようね」
頭を撫でて寝室から出ようとする。
Aさんが俺を呼び止める。
「福良さんと一緒に居たいって言ったらダメですか…？」
無理だった。
同じ部屋だけど壁があるし、拓実もいるから二人っきりになりたくてもなれなくて。
もうAさんがこんなに必要としてくれてるのに。
考えがあった。
「ダメじゃないよ。一緒にいよう？」
俺はスマホで河村に連絡する。
今すぐに俺の部屋に来て拓実をオフィスで面倒見てくれないかって。
事情を話すと河村は了承してくれた。
今日だけだから。
今日はずっと一緒にいるから安心して？
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作者名：*ゆ う* | 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月1日 6時
