優しい君だから。 ページ9
病院へ向かっている途中、拓実が少し嘔吐した。
コンビニに立ち寄り、処理をする。
ホントに少しだから大したことはないはずだけど、俺たちにとって赤ちゃんが高熱を出して嘔吐するというのはどうしても慌ててしまう。
車を飛ばして行きたいけど安全運転第一に。
そんなにスピード出したら拓実酔っちゃうかもしれないしね。
気持ち落ち着かせていこう。
病院の前に着き、Aさんと拓実を先に降す。
俺はその後駐車場に停めて早足で院内に入る。
中に入ると既に受付を済ませてたらしく体温を計っていた。
今では主流となったおでこに数秒当てるだけで体温が計れるやつ。
ピッと音が鳴り2人で表示を覗き込む。
40.0℃…さっきよりかなり上がっていた。
受付の女性に報告すると苦しそうだから空き部屋のベッド使って下さいと誘導される。
ベッドに拓実を寝かせる。
日曜日ということもあり救急外来は忙しそう。
総合病院だから救急車も頻繁に入ってくるし、外来もそれなりにいる。
自分たちの番が来るまで待機しておこう。
Aさんは俺より挙動不審だ。
「苦しそう…高熱ですもんね…吐いちゃったし…」
「もう病院だから大丈夫だよ、Aさん」
「拓実さんに何かあったら私…」
涙ぐむAさんの頭を俺の胸の中に押し込む。
優しい君だから、他人の赤ちゃんのことなのに心配してくれてありがとう。
拓実ならきっと大丈夫だよ。
だから安心して。
「福良拓実くん、診察室にお入り下さい」
拓実を俺が抱き抱えてAさんは涙を拭いてから立ち上がった。
何ともないと良いんだけどな。
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作者名:*ゆ う* | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月28日 12時