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後悔はしたくない。 ページ8

まだ約束の時間には早いっていうのに僕の見えるところにAさんが歩いてきた。
こっちに気がついたのか小走りしてくる。



「河村さんこんにちは!待ち合わせ時間まだなのにこんなに早く来てるだなんて思わなくて…」


「いやいや、Aさんだってまだ早いから」


いつもはSNS上でしか会話してないから直接会って話すと緊張してしまう。


早いけど会場まで向かいましょうとの事で並んで歩く。周りから見たら僕らって彼氏彼女に見えるんだろうか。


これでもかってくらい近くて、手を伸ばせば触れられるこの距離感。


「河村さん、その、えっと、急に誘って迷惑じゃなかったですか?」


「とんでもない、僕はゆっくりAさんと話が出来るだなんて本当に楽しみにしていたんですから」


「ありがとうございます、安心しました。ダイレクトメッセージでお話してから私も河村さんとお話するの楽しくて…」


チラッと横顔を覗くと少し照れているのか人差し指で頬をなぞっていて、僕なんかと会話で楽しんで貰えるなら本望だと思ってさ。


ここで福良の助言を思い出す。
〈 Aは頭をポンポンってされると喜ぶんだよ。少女漫画みたいで憧れるんだって〉
もしかしてあいつもやったことあるのか。


こんな柄にもないことをしてもいいものか。
でもやらなくて後悔するより、やって後悔した方がいいに決まってる。


僕は少し震えている左手をAさんの頭の上に置いた。


「じゃあ、もっと一緒に楽しもうね」


二回ポンポンと触る。
寒さのせいもあるのか二人して頬赤くしちゃってさ。20代後半の男女だけどまるで学生の恋愛みたいで。
あ、僕まだ学生なんだけどさ。


その後も会話は途切れることなくいってイベント会場に着いた。
あ、そういえば謎解きに来てるんだったな。


僕はそこまで得意ってわけでもないが嫌いでもない。少しAさんにカッコイイところを見せたいだなんて思ったけどこの人も頭良いからそんなことは起こり得なくて逆に僕が教えて貰ったりもして。


ちゃんと僕も解けてたから全部Aさん任せにしてたわけじゃないけどさ、ちょっと落ち込むじゃん?


そして僕らは難なくクリアして出口付近で写真を撮る。
これはこれで家宝ですね。



.

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作者名:*ゆ う* | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年1月3日 20時

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