恋の訪れ。 ページ1
知らない女の人がオフィスにいた。
むさ苦しいこんなオフィスに隠れるようにひっそり座っててさ。
横に福良がいて「おはよ、河村」なんて普通に僕に挨拶してくるもんだからそこにいる女の人って僕だけしか見えない存在なのかなって思うほどだったんだ。
しかもここはオフィスの中でも執務室と言われる場所で福良と僕とあと数人しか入らない所なんだけど。
「あ、河村、この人不審者って思ってる？」
ヘラヘラと笑って隣でパソコンと格闘している女の人を指差して言った。
「このオフィスで見たことない方ですから、多少は。」
「不審者じゃないって。俺の大学の時の同期。昨日からパソコン調子悪くて呼んだんだよぉ」
「パソコン詳しい奴他にもいるだろ」
「彼女、フリーでエンジニアやっててパソコンもかなり詳しいし頼んじゃった！大丈夫、親友だから会社の秘密とか漏らさないから安心して！」
いまいち脳が追いつけない。
ひとまずこの人は福良の知り合いで福良が信頼してるってことか。
その後も福良とその人はたまに話しながらなんとかパソコンが復旧したらしい。
「Aお疲れ、マジ助かったわぁ、大事な資料とかもあったから助かったわ！」
「まぁ、福良くんの事だからバックアップしてると思うけどなんとか復活して良かったね！」
「ホントAに助け求めて正解だったわ！あ、コーヒー持ってくるから待ってて！」
福良が部屋から出ていき僕は彼女と二人きりになってしまった。とりあえず挨拶とお礼はしといた方がいいだろう。
「福良がご迷惑をお掛けし申し訳ありません…」
初めて見る彼女の顔はとても可愛らしくて、福良と親友だなんて妬けるくらい可愛くて。
「いえ、大丈夫ですよ」なんて笑いかけてくれる彼女に落ちてしまうのはもう自然現象に等しくて。
ドキドキして胸が熱くて。まるで中学の頃に経験した恋愛みたいで。
僕ってこんな簡単に人を好きになる奴だっけかってもう訳わからなくなって。
「…河村さん？」
僕の挙動がおかしかったせいか顔を覗き込まれてしまう。いまそんな事されたら一発KOだ。
僕の負け。
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作者名：*ゆ う* | 作者ホームページ：
作成日時：2021年1月3日 20時
