おにぎり宮でアルバイトするお話【宮治】

第47話 ページ48

「夏祭りですか？」



治「せや。夏祭り。」




今日もおにぎり宮にはお客さんが入っている。


治さんが注文されたおにぎりを握っている隣で、私も盛り付けをしていると、
治さんから夏祭りの日、空いているかと聞かれた。



これは、もしや…と思っていたが、治さんの次の言葉で私の期待は外れることとなった。




治「おにぎり宮、屋台出店しよかなって思っててん。

もし空いてたら手伝ってくれへん？」






夏祭り…、花火大会も兼ねているそれは、人もたくさん集まる。

商売としては儲かるいい機会なのだろう。



「空いてます。手伝います！」



その日、特に約束もなかった私はすぐに承諾した。



治さんと花火を観れるかもしれない。

なんて淡い期待を込めながら。



治「ほんま！助かるわ！
実ちゃんも涼くんも空いてへん言われて、どうしようかと思ってたとこやねん！」



「いえ！その日暇だったんで！！」




治「ほんま？華の大学生やん。彼氏とかと祭り回ったりせんの？」


「か、彼氏なんていませんっ…！」


治「…おん、そか！」




私は盛り付け終わったお皿を、
「お待たせしました、鮭と鶏玉そぼろの盛り合わせです。」
と、カウンターに座るお客さんに出しながら、
慌てて否定した。



治さんの口から、彼氏、なんていう単語が出てきたことに焦った私に対して、

全く表情を変えずにしれっとおにぎりを握り続ける治さん。



なんなんだろ、最近本当に治さんのこと意識しちゃう。
今まで全くそんなことなかったのに。



全部あの侑さんが変なことばっかり言ってくるせいだ。
宮侑許すまじ。





客「なんや、夏祭りやって？
姉ちゃんべっぴんさんやし、彼氏おらんのやったら俺と行く？」


「え？」


治「ウチの子ナンパせんとってくださーい。」



侑さんになんて復讐してやろうかと考えてる横で、

カウンターで食べている常連のお客さんにそう声をかけられ、苦笑いで返していると、
空かさず治さんが割り込んできてくれた。

困ったことに、常連さんにこう声をかけられることはたまにある。






にしても夏祭りかぁ…




地元のお祭りはよく行ってたっけなぁ。


兵庫に来てからまだ少ししか経ってないし、こっちの地域のイベントなんて全然知らなかった。






「楽しみですね、夏祭り。」



治「おん。せやな！」









別に一緒に回るとか、一緒に花火見る、なんていうデートの約束とは程遠いけれど、

心なしか楽しみな私がいた。

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