第19話 ページ21
幸い、足は捻ってないので、歩くことはできると思う。
が、両手を使えない私は立ち上がることができない。
それに気付いたのか治は、突然私の腰を持ち上げると、ふわりと立たせてくれた。
治「歩けるやろ?保健室行ってきーや。」
「あ、うん、ありがとう。それじゃあね、宮くん。
あ、宮くんも、倫太郎も。」
しれっと挨拶をしてその場を立ち去った。
曲がり角を曲がって彼らの死角に入った瞬間猛ダッシュした。
腕振れないからめっちゃ遅かった。
侑「なぁ、サム、学外者も保健室使ってええの?
倫太郎姉さんって角名の親戚とかちゃうの?」
角名「俺に親戚のお姉さんなんかいないよ。」
治「知らんけど、思わず…。」
明らかにやっちまった顔をした治だったそうだ。
保健室にて。
先生「左手首骨折してそうやわ。
両腕使えないなんて、生活できる?」
「ま、まぁ、右手の方は薬指やし、あんま、使わへんし…?
大丈夫ちゃいますか…?!」
そのあと病院で診てもらったらしっかりと骨折していた。
両腕に包帯グルグル巻きで学校に行かなあかんなんて、どんな罰ゲームやねん。
「私はただ倫太郎を眺めていたいだけなのに!!」.
1年の春、初めて倫太郎を見たときは、ただ眠そうな背高いやつおるなってだけやった。
席は前後やった。私が前。
窓から春の風が入って来たとき、ふんわりと後ろからいい香りがした。シトラスの柔軟剤。
そして、友達に連れられて観に行ったバレー部。
ギャップ萌えや。
その日から、倫太郎の推しを始めたし、1番簡単に近くで眺められる仲良しな女友達ポジションをゲットしたんや。
この仲の良い女友達になるまでは早かった。
彼は思ったよりも話しやすかったから。
どんな思いで私が倫太郎に近付いたと思ってんねん。
どスケベ下心しかあらへんわ。
・
そんな私が両腕包帯真っ白にして、通学のバスに乗っている。
担任は保健室の先生に怪我した報告するために、いつもより数本早いバスに乗った。
今日は双子には遭遇しなかった。
朝練もっと早いんやなぁと感心する。
そうししばらくしてプシューと止まったバス。
乗り込んできた、揺れるくらいサラサラな髪。白い肌。スラリとした影。
角名「あ、Aじゃん。おはよ。隣いい?」
全力で頷くと、空いていた私のバスの隣に座る倫太郎。
近い。いい匂い。
509人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
光魚苦(プロフ) - たたちゃ〜ん!!!早く更新して★ (2020年9月4日 3時) (レス) id: c7e0cd7ffb (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - とてもこの作品が好きです!更新楽しみにしています! (2020年6月4日 1時) (レス) id: 6cf5a12da9 (このIDを非表示/違反報告)
すんよる(プロフ) - 本当に好きすぎて死にます。作者さん生まれてきてくれてありがとう。更新待ってます。私は作者お姉さんになります。 (2020年5月31日 2時) (レス) id: 22bb7fbe7f (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - こんにちは。更新されるたび楽しみが止まりません!いつも楽しく見させていただいています。 (2020年5月24日 17時) (レス) id: 7700997db3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たたねんこ | 作成日時:2020年5月21日 2時