第74話 ページ31
自分でもそんなことを言ったのは驚いた。
でも口が止まらなかったのだ。
「ずっと、ずっと前から好きなんです…。
でも私、こんな私じゃ、貴方に釣り合わないし…」
目の奥から涙が出る感覚がした。
昨日あれほど泣いて、目の周り真っ赤になっているというのに、また涙が出るのか。
私の体の中の水分全部目から流れてるんじゃないか。
ぎゅっと治さんにしがみついて泣いた。
「バイトとして、お店支えていられるだけで十分だったんです…、でも…」
欲張ってもいいですか。
そこまで言いかけた瞬間、治さんが私から離れた。
と、思ったら、今度は目の前に治さんの顔。
唇に触れる柔らかい感触。
治「それ以上は黙っとき。」
再び腕を引かれ、お店の中に入る。
横目に、ポカーンとガン見してるお客さんが写った。
そんなお客さんを無視して、治さんは店のドアを閉めた。
外の世界と遮断され、シーン…と静まり返る店内。
私の手を握ったまま、俯いて、なにも喋らない治さん。
私今、この人にキスされた…？
「あの、治さん…」
治さんはその声にピクッと反応すると、
次はしっかりと目を合わせて、
治「Aちゃん、なんで来たんや…」
それだけ言うと、少し恥ずかしそうに目線を逸らす彼。
「さっき、侑さんのライブ配信見て…」
その言葉で全てを理解したかのように、治さんはまたこっちを見つめた。
治さんの目に写る私、髪はボサボサだし、目は腫れてるしブサイクだろうなって心配になる。
そんな私の髪を撫でながら、口を開いた治さん。
治「先に謝らな。嘘言ってごめんな。」
嘘ってどこまでが嘘なのよ。
私のこと好きって言ったのも嘘なの？
治「嫌やったらごめん。せやけど、こうやって来てくれたってことは、嫌やないんよな…？」
治さんの目を見つめたまま、ゆっくりと頷く。
治「俺、ほんまは、Aちゃんが卒業するまで言っちゃあかんって思っててん。
でも、なんで言っちゃあかんのやろって昨日思ってしもてん。
Aちゃん。
好きや。」
治さんの口から、再び聞けた、好きの2文字。
私も返事をしようと口を開くも、今度は言葉が出なかった。
私だってずっと前から好きだったんだよ。
その言葉の代わりに、私の目からはまたも涙が流れた。
髪を撫でる治さんの手はとても暖かった。
ずるいよ。
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ちかな(プロフ) - とても良かったです…素晴らしいお話でした！！！よろしければ番外編も見たいのでパスワード教えていただいてもいいでしょうか？あの続きを読みたいです！！ (6月6日 11時) (
レス) id: 94bbb03075 (このIDを非表示/違反報告)
ごま吉(プロフ) - 凄く面白いです！ですが68話のところ名前が(がないせいで変換されてないのが気になりました……！) (2021年11月10日 11時) (レス) @page25 id: 162c50cd7b (このIDを非表示/違反報告)
ayee(プロフ) - 番外編めちゃくちゃ見たいです！ パスワード教えてください。お願いします！ (2021年9月4日 9時) (レス) id: 3db7910b34 (このIDを非表示/違反報告)
えるる(プロフ) - 治ぅ…幸せになってよかったです！素敵でした！番外編私も見たいのでパスワード知りたいです。。ご検討お願いします (2021年8月28日 2時) (レス) id: dae120511d (このIDを非表示/違反報告)
もちーず - あの、番外編短編集のパスワードを教えて欲しいです。身勝手な願いですが、お願いします！ (2021年8月8日 20時) (レス) id: abd0311f3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たたねんこ | 作成日時：2020年5月1日 12時
