おにぎり宮でアルバイトするお話2【宮治】

第50話 ページ4

「ありがとうございましたー！」





治「売り切れやな！」

「お疲れ様です！」





花火の開始時間まではまだ少し残っている頃、

持ってきていたおにぎりが完売した。



治さんとハイタッチして喜ぶのも束の間、次のお客さんが来る前に売り切れの紙を出し、屋台をしまう。




もうすぐ花火の時間だからか、人通りが心なしか少なくなったような気がする。




たぶん、ここからじゃビルが邪魔で見えないんだ。




花火は川沿いで上がる。

屋台の出ている大通りは、道沿いにビルが立ち並んでおり、河川敷まで出ないと花火は見えないようだ。




治さんは来たことがあるって言ってたからか、そんなに花火を見たい素振りは見られない。






治さんと2人で片付けをしていると、







会場のざわめきが大きくなり、







ひゅるひゅるひゅーー…

どーーんっ！！！








1発目の花火が上がる音。






「あっ、始まっちゃった…。」






そこからは立て続けに花火が上がる。

ビルの隙間から見えるのは花火の隅っこの方。




そんなビルの隙間を見つめていた私に気付いたのか、








治「花火、見たいん？」



「えっ…」




治さんに声をかけられる。






治「なんや、夏祭りの話出てから、花火のこと言わへんから興味ないんかと思ってたわ。



見たいんやったら、




一緒に行こか？」







「え、片付けは…」




治「片付けなんて、花火終わってからでもできるやろ。

明日の朝片付けてもええくらいなんやから。」






そんなこと言われたら、行きたくなっちゃうじゃん。





治「花火、見に行こ？」




治さんは私の手を引いて、にっこりと笑った。







「はいっ…！」








・







・









「ほんとに人多い…」





はぐれないように、なんて言い訳をして治さんの手をしっかり握った。







やっぱり、治さんにとって、私は子供にしか見えないのかな。








治「着いたで。」




「わぁ…」






ビルとビルの間の公園。


花火も川もしっかりと見えるのに、人は少ない。






治「穴場やねん、ここ。」






ベンチに腰掛けると、そこから花火を見上げた。

花火だけじゃない、花火を見る治さんを見上げたんだ。




もう人混みじゃないというのに、繋がれた手はそのままで。








「私、治さんと花火見られて良かった…」








そんな私の言葉は花火の音にかき消されて、治さんの耳には届かなかった。

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