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第64話 ページ21

男「あ?誰やお前。その手離せや。」


治「嫌がっとるやん、そっちが離せや。」





いつも聴き慣れたはずなのに、いつもと違くて、低く響く声が聞こえた。


アルコールのせいで頭がぼーっとして何が起こってるかは分からなかった。
 
ただはっきりと分かるのは、その大きな手は、私が大好きな手。




治さん…。





ぎゅっと握り返した。






治「っ!」




その途端、治さんが思いっきりその手を引いた。




男「おわっ!」




突然のことだったので男が一瞬力が緩み、
私は治さんに引き寄せられ、治さんの胸の中に飛び込む形になった。

立ってるのも精一杯な私を支える大きな手。

あったかい。




治さんは、その男をじとーっと睨みつける。





男「くっそ!」





背が高く威圧的な治さんに怖気ついたのか、
バタバタと男が走って逃げていくのが視界の端から見えた。






しばらく治さんの胸に寄り掛かってぼーっとしていたが、
治さんは私から離れると、



治「Aちゃん、何しとん。なんでこんなベロベロになってんの、あいつに飲まされたん?」


心配そうに覗き込まれたが、その声は怒りを含んでいた。




「んー…」




私は治さんを見つめ返すことしかできなかった。






「眠い…」






治「はっ?!」







その場にしゃがみ込みかけた私をサッと支えてくれた。





治「飲み過ぎや。二十歳になったからっていきなりこんな飲んだらあかんやろ、気持ちは分かるけど。
車で送ってったるから、店まで歩けるか?」




お店…




そういえばここ、おにぎり宮近いっけ。




「……」




治「はぁー…、しゃーないな。乗り!」




治さんは私の前にむしろ向きでしゃがみ込んだ。

私は力を振り絞って、その背中に身を預けた。




フワッと視界が高くなる。






「おさむっちの背中あったかい〜」


治「…は、おさむっち…?」





そのまま歩き出す治さん。

ゆらゆらと揺れて、とても心地が良かった。





「安心する、おさむっち、好き…」




ぎゅっと治さんの背中にしがみついた。





治「……ほんま飲み過ぎはあかんで、Aちゃん…。」





そのまま私は眠りの世界へと落ちて行った。







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ちかな(プロフ) - とても良かったです…素晴らしいお話でした!!!よろしければ番外編も見たいのでパスワード教えていただいてもいいでしょうか?あの続きを読みたいです!! (6月6日 11時) (レス) id: 94bbb03075 (このIDを非表示/違反報告)
ごま吉(プロフ) - 凄く面白いです!ですが68話のところ名前が(がないせいで変換されてないのが気になりました……!) (2021年11月10日 11時) (レス) @page25 id: 162c50cd7b (このIDを非表示/違反報告)
ayee(プロフ) - 番外編めちゃくちゃ見たいです! パスワード教えてください。お願いします! (2021年9月4日 9時) (レス) id: 3db7910b34 (このIDを非表示/違反報告)
えるる(プロフ) - 治ぅ…幸せになってよかったです!素敵でした!番外編私も見たいのでパスワード知りたいです。。ご検討お願いします (2021年8月28日 2時) (レス) id: dae120511d (このIDを非表示/違反報告)
もちーず - あの、番外編短編集のパスワードを教えて欲しいです。身勝手な願いですが、お願いします! (2021年8月8日 20時) (レス) id: abd0311f3a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たたねんこ | 作成日時:2020年5月1日 12時

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