【WT】不器用な青年とピアノを弾く青年の話【br】 (ページ8)

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4話ページ8

「最初はただの習い事だった。でも機会があって学校でピアノの弾くことになったんだ
音楽室で練習していたら、他のクラスの担任の先生が入ってきた。その人は僕に向かってこう言ったんだ」

【優しい音色だね。broooock君の性格が出てるのかな】

「その人は女の先生で、髪は肩くらいまでの茶髪で」

突然、broooockが俺の目を真っ直ぐに見てくる。視線を合わせるといった感じではなく、俺の『目を見ている』という表現の方が正しいだろう

「Aと同じ、水色の瞳だったんだ」

言葉に詰まった。broooockの表情が、あまりに切なそうだったから

俺達はきっと、無意識のうちにお互いに『その人』を投影していたのだろう

どこか似ているようで、別人。悲しいくらい、他人の空似同士

それでも、俺が返す言葉はひとつだ

『…因みにうちの母親は中国なんて行ったことないからな』

「あは、そう来る？」

broooockの表情はぱっと変わりへらりと笑う。先程までの憂いは見る影もなかった

broooockが今ここにいること。そしてあの表情を見るに何かしらの形で『その人』と別れることにはなったのだろうが

それでも、俺達にとっての『その人達』はピアノを好きになるきっかけ、そしてこの奇妙な出会いをくれたきっかけにもなったのだ

それだけで、充分だった

『考えられる中では1番センスのある返しだと思ったけどな』

「自分で言うんだそれ」

『俺は思ったことは素直に言うタイプだ』

「それはそれで気ぃ遣わなくていいから楽かも」

まるでこれから先もずっと仲良くしていくような、そんなことすら感じさせる会話

「明日の曲、当てられるか楽しみだな〜」

『明日もいるのかよ』

「うん、だって部活飽きちゃったし」

『本当に自由だな』

明日はどの曲が聴けるのだろうか。何故か既に当てられる気でいる訳だが

思いもよらない最新の曲なんかが来てしまった日にはおそらく答えられないだろう

それに備えて今日は久々に、自主的にピアノでも聴こうかと考えるのだった

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