【WT】不器用な青年とピアノを弾く青年の話【br】 (ページ7)

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『…小学生の頃の帰り道、とある家の前を通りすがるといつも女の子がピアノを弾いているのが窓ガラス越しに見えた。赤いワンピースに蒼い髪飾りを着けた、同い年くらいの子だった』

顔は見えなかった。ピアノの弾く後ろ姿だけが記憶に残っている

『その子の弾くピアノが好きで、いつもその曲を調べて聴いてた。けど、1年くらいしたら引っ越したみたいで…そっから姿を見ることはなかった。それだけだよ』

「…そうなんだ」

こういった話をした後、相手から飛んでくる言葉は大体予想がつく

『恋』だの『愛』だの、そんな一言で片付けられてしまう

「でも僕、小学生の頃は中国にいたから別人だね〜」

『…は？』

「え、そういう話じゃないの？」

『話聞いてたか？女の子って言ったけど』

「後ろ姿だけだったらワンチャンない？」

会話の飛び方が尋常じゃない。最早まともに言葉が伝わってるのかすら怪しいと感じるレベルだ

でも、きっと誰も予想出来なかったその返答にどうしようもなく笑いがこみ上げてくるのも事実で

『ぷっ…ははは！意味わからな過ぎるだろ！』

堪えきれずに吹き出すと、broooockも釣られてか笑い出す

「あはは〜、僕そんな面白いこと言った〜？」

『面白いなんてもんじゃねぇよ…！』

話すようになってたった2日。そんな奴に過去を語って、目の前で涙を流す程笑ってしまうなんて誰が想像しただろうか

「じゃあ次は僕が話す番ね」

『ふはぁ…わかったわかった。それは聞くわ』

一頻り笑い終える。既に表情筋が痛いくらいだが、俺だけ話すというのも平等じゃない気がする

その辺りから適当に椅子を引っ張ってきてbroooockの隣に腰掛ける。まだ少しぼやけている視界をどうにかする為にごしごしと目を擦った

「僕がピアノを好きになったのも小学生の頃の話なんだ」

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