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『(…何も考えず、この手をとれたらどれだけ楽しいか)』
思ったことは隠さない主義だった。それでも、友達を困らせたくなくて口を噤むことを、こいつらとの付き合いで学んだ
不安そうな表情で顔を覗かせるbroooockと目が合う
『(そんな顔しなくても、最初から答えは決まってるよ)』
ぐっと拳を握り込む。必死に、必死に本音を飲み込んで、出来るだけ明るく振る舞う
『…悪いけど、それは出来ないな』
「っ、何で…」
『俺はゲームなんて持ってないし、きっとこれから先自分で買ったりしてやることもない。お前ら程ゲームが好きな訳じゃないからさ』
本を鞄にしまって立ち上がる。そのままNakamuの横をすり抜け、教室の出入口へと足を進める
『応援はしてる。頑張ってな』
精一杯の笑顔で振り向く。落ち込んだ表情の友達にしてやれることがこれくらいしかないのが悔やまれる
そこからは振り返ることなく教室を出て、廊下を歩いた
少しすると、後ろから走ってくる足音が聞こえる
「A…!」
broooockの声だ。驚いて思わず足を止める
「本当に、Aは興味ないの…!?」
回り込まれて目の前に立ち塞がられる。少し息を切らしたbroooockは、いつになく真面目な顔で真っ直ぐに俺を見つめてくる
『…興味がないって言ったら、嘘になるよ』
きっとどんなことだってお前らとなら楽しい。そんなことわかり切っている
それでも、俺には何となくわかる。お前らは『5人』じゃない
『もしかしたらきりやんが何かの理由があって戻ってくるかもしれないだろ?その時に枠がなかったら、きっと後悔するぞ』
「人数なんて関係ないよ、みんなとやれれば…」
『…そうだな』
そうだ。『みんな』だから楽しいんだ
きっと俺は1人でやるゲームを楽しめない。それは本当にゲームを好きだとは言えないだろう
だから、いつか自分がゲームが大好きな『みんな』の輪を壊してしまいそうで
大切な友達だからこそ、自分が原因で傷付いてほしくない。余計な争いを生みたくない
『……ごめんな、broooock』
どうか、わかってほしい。そんな気持ちを込めた苦笑いに、broooockは俯いたまま何も言わなくなってしまった
重い足を動かして、その横を通る。それから、誰かが追い掛けてくることはなかった
『(…これで良かったんだ)』
そして、季節は過ぎて
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エメグリライ(プロフ) - 綺麗で儚くてそれでも楽しくて面白い、宰さんの作品が好きです。(告白みたいですみません。感想そのまま書いたらこうなりました。) (2021年12月25日 9時) (レス) @page1 id: 2c3be79f3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宰(つかさ) | 作成日時:2021年7月25日 0時