【WT】不器用な青年とピアノを弾く青年の話【br】 (ページ24)

今日:10 hit、昨日:8 hit、合計:18,528 hit

13話ページ24

残暑も過ぎ、すっかり涼しくなった頃。俺はきんときに呼ばれて空き教室に遊びに来ていた

そう珍しいことではなく、夏休み明けからは頻繁に声が掛かるようになった。6人全員からも名前で呼ばれる程に割と親しくなった俺は、気まぐれにその集まりには参加させてもらっていた

今日はゲーム機を借りて4人でモンスターを狩るゲームをやらせてもらったが、今までやった中で1番と言っていい程難しく1回で断念してしまった

交代制でやっているらしく、broooock、きんとき、Nakamu、シャークんの4人がやっている間、スマイルは本を読んでおりきりやんは机に座りながらスマホを見ている

俺もその近くで本を読みながら4人のゲームを横目で見たりして、何事もない日常を過ごしていた

「あ、そういえばきりやん」

「何ー？」

「例のゲーム実況の件、考えてくれた？」

一区切りついたのか、Nakamuがきりやんの方を見る。他の3人も同様に顔を向け、スマイルは視線だけそちらに向けているようだ

「…そのことなんだけどさ」

きりやんの声のトーンが落ちる。手に持っていたスマホをポケットに入れると机から降り、立ち上がる

「俺、中学時代の友達と別で実況やることになった。ごめん」

部活、生徒会とやりつつも集まりには基本積極的だったはずのきりやん。そんな奴から思わぬ返事が来たことに、全員が驚きを隠し切れていなかった

「…ちょっと、今日は帰るわ」

気まずさのあまり、きりやんはそそくさと教室を出て行ってしまった。全員がその後ろ姿をただただ眺めることしか出来なかった

「まさかって感じだな…」

「きりやんなら絶対喜んで参加してくれると思ったんだけど」

「でも5人じゃキリが悪い気が…」

「…そうだよ。なぁbroooock、Aには声掛けてないのか？」

「あ…」

Nakamuに問われると、見るからに動揺した表情になるbroooock。それを見たNakamuは首を傾げ、俺の方まで早足で歩み寄ってきた

「A、良ければ俺達とゲーム実況やらないか？」

真っ直ぐに見つめてくる、俺と同じ水色の瞳。真剣で、それでいて笑っている。これから先の未来に強い希望を抱いているその表情。そして、差し出された右手