星朧 (ページ10)

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藍ページ10

家に帰り図鑑を開いてみる。
”こどもせいざずかん”と書かれた表紙に自分で笑ってしまう。
しかし開いてみると案外面白くてどんどんと読み進めてしまった。気がつけば窓からはもう夕日が差し込んでいた。

「水あげに行かなきゃ」

畑に向かい、いつもどおり水をやっていたがいつもとは違う晴れやかな気分だった。死ぬことを考えず、何かに熱中していられたのはいつぶりだろう。
私は夕日が沈み薄暗くなるまで畑出作業をした。雑草を抜いたり、枯れた葉を取ったり。あっという間に暗くなって空にはぼんやりと星が浮かんでいた。

「あの星座って何座だっけ？」

ぼんやりとしていてあまり良く見えない。諦めて家に入る。
もう一度図鑑を開いてさっき見た星の形を探してみる。

「しし座？かな」

明日ドヨンさんに聞いてみよう。

次の日の朝また花に水をやっているとまた彼が通りかかった。

「あ、先輩。おはようございます」

「おはよう」

またいつものように笑いかけてくれた。だが、いつもと違って何故かドキッとした。何だ？と思いながらも彼に昨日聞きたかったことを聞いてみた。

「あぁ、最近は曇りが多くて星が見えないかもね。でも、合ってるよ。よくわかったね」

ふっと笑った彼にやっぱりなんだかドキッとした。

「あの図鑑を読んだからかな」

それをごまかすために花の方へ目を背ける。

「じゃあ来月が楽しみだね」

「はい。しっかり勉強していきます」

「そんなに気負わなくても、ゆっくりでいいよ。待ってるから」

それじゃあ、と言って去る彼の背中を私は何故か動悸がする心臓に手を当てぼうっと見ていた。