秘色色 ページ7
「おはよう」
「おはようございます」
庭の外から声をかけてきたのはドヨンさんだった。
「今朝もやってるんだ。偉いね」
「はい、だってあげないとこの子達も死んじゃいますから」
そうだね、と彼は笑いながら言った。
「講義は午前中から？」
「はい」
「そっか、頑張ってね」
がんばります、そう言うと彼は通り過ぎていった。
ほぼ毎朝話しかけて来るな・・・ご飯とかよく持ってきてくれるし。お母さんかよって。
思わず笑ってしまった。
そういえばあの手紙の人もお母さんみたいだった。今日は朝のうちに図書館に行ってみようかな。
図書館にはまだあまり人が入っていなかった。静かで温かい空間に心が安らぐ。
あの本の元へ一直線に向かう。
本を手に取り開くとまたメッセージがあった。
律儀だな、なんて思いながらも内心ワクワクしながら二折になった紙を開く。
自分のことは隣人とでも読んでください笑
なんだか秘密の会話みたいで面白いですね。
そういえば最近秘密の花園という映画を見たんですけどAさんはお花好きですか？
”隣人”というワードに聞き覚えがあった。スパイダーマンだっけ？家にDVDがあってこの間見た気がする。この人もスパーダーマンが好きなのだろうか。
親愛なる隣人へ
花は大好きですよ。家でガーデニングをしているくらいですから。時々大変なこともありますけど楽しいです。そして、もしかして隣人さんはスパーダーマンが好きだったりしますか？私もこの間見てかっこいいなと思いました。
また挟んでおく。なんだか人目を感じたのですぐに本棚に戻しその場を去った。
大学の講義が始まった。教授が話していることや板書を写していく。言っていることは分かるし理解はできるけどなんだか身が入らない。いつもこうだ。きっと将来やりたいこともなく、目標もないからなんだろうな。
本当にうんざりだ。自分が生きている意味がわからない。友達もいない。家族の顔すら思い出せない。そんな人がこの世界に生きている意味があるのだろうか。
大きなため息をつく。気分が落ち込んだり、普通になったり。波がありすぎて疲れる。
とにかくこの講義が終わるまでじっと時がすぎるのを待った。
「あれ、Aさん！うちのサークルはいらない？」
顔見知りの先輩が休憩中に話しかけてきた。
「あの、なんていうサークルでしたっけ？」
「天文サークルだよ！」
「考えてみてね！楽しいと思うよ！」
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作者名：つちゃ | 作成日時：2022年7月25日 7時
