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それなりに平穏な生活を送り、いつしか冬がやってきた。

雪が降り出す前の時分に、四ツ目神社では10年ぶりくらいの結婚式が執り行われた。祝いの参列は私が生きていた頃とそう変わりないもので、四津村の伝統は本当に長いこと守られてきたんだな、と感心した。

白「ほら見てクロ!花嫁さん、嬉しそうにしてるでしょ?きれいな白無垢をきてお婿さんと式を挙げられたからだよ!」
黒「う、ぅん…。」

花嫁の白無垢に無神経なことを言ったらしいクロちゃんが、怒ったシロちゃんに引きずられながら遠ざかっていく。私はつられるように花嫁の顔を見て、足を止めた。

きれいだな…。
真っ白な装束に身を包み、唇と頬には血の色が通っている。ふわりとした微笑みを浮かべて、本当に嬉しそうだ。あれが、大人になることが出来た女の子の持てる幸せなのだ。

「いいな…。」
「何がだよ?」
「えっ!?」

いつのまにか背後にイミゴがいた。手には朱色の盃を二つ持っている。

「気配消すのやめてくれる!?」
「悪かったな、存在感薄くて。」

軽口もそこそこに、イミゴは盃の片方を私に差し出した。

「これ、供えられたお神酒。タガタが『縁起がいいから貰っとけ』って。」
「あ、ありがとう。」

お神酒を受け取って、そっと口にする。私が生きていた頃は祝いの席でお酒を頂戴するのは別に変なことではなかった。でも美味しいかどうかは今もよく分からない。

「カラいな…」

イミゴが盃を傾けながら一丁前にそんなことを言うので、思わずぺしっと彼の結われた髪をはたいた。

「えっ、なんだよ。」
「イミゴは見た目通りの年齢でしょ。何お酒の味覚えちゃってるのよ。」
「普通の現代っ子と違って、俺は祝い酒は飲ませてもらえるんだよ。Aこそ二十歳になる前に死んだくせに、人のこと言えないだろ!」
「時代が違うからいいの!」

それにイミゴにおっさんみたいなセリフを言って欲しくない。冬になると急に朝起きられなくなるイミゴを、クロちゃんとシロちゃんの代わりに起こしに行くことが何度かあった。寝る時は顔の布を外すイミゴの寝顔を初めて見た時、あまりのあどけなさに驚いたものだ。

「そういや、A。」

イミゴが空になった私の盃を受け取りながら、優しく口元を緩めた。

「お前だってきっと似合うよ、白無垢。」

かっと顔に熱が集まる。声が出なかった。
そうかな、似合うかな。
嬉しい、な。

去っていくイミゴの後ろ姿を、私は顔を真っ赤にして見送るしかなかった。

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kalisu - めっっっっちゃ面白いです!!! (5月20日 22時) (レス) @page17 id: 350d3d48ac (このIDを非表示/違反報告)
そぞろ(プロフ) - 神影さん» 全然そんなことないですよ!四ツ目神たくさん楽しみましょうね! (2019年1月13日 12時) (レス) id: cd9a550aa8 (このIDを非表示/違反報告)
神影(プロフ) - そぞろさん» すみません、気を遣わせてしまい…もし、読めたら報告します! (2019年1月13日 12時) (レス) id: 98976194be (このIDを非表示/違反報告)
そぞろ(プロフ) - 神影さん» そうなんですね。神影さんのいつかの楽しみのためにショートストーリーのネタバレは極力しないよう気をつけて書かせていただきますね.*・゚ (2019年1月13日 12時) (レス) id: cd9a550aa8 (このIDを非表示/違反報告)
神影(プロフ) - そぞろさん» ショートストーリー読みたいんですが、親にお金を払ってもらっているので交渉が難しいです(汗)でも、いつかきっと読みたいと思います! (2019年1月13日 12時) (レス) id: 98976194be (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そぞろ | 作成日時:2018年11月21日 16時

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