reunion ページ3
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「なんや、角名も遅刻か。早よ準備せんと北さんに怒られんで」
「ごめん、先生と話してた」
「Aと同じこと言うとるやん、仲良しか」
比較的侑よりも大人で融通の効く治が、角名くんに発した何気ない一言に、肩をびくりと震わせ反応を見せる私をちらりと一瞥した角名くん。そんな彼と目が混じり合い、何となくの気まずさに目を横に逸らす。
「……そうなの?」
私をじっと見つめながら、首を少しだけ曲げた彼の口は微かに微笑んでいるように見えた。…完全に弄ばれている。まるでこの状況を愉しんでいるかのような様子に、何処からか冷や汗が溢れ、「え、あ、うん…」と曖昧な返事を零す。…ダメだ。彼に呑まれてはいけない。自分の本能がそう言っている。
「なんや、二人とも遅刻か」
「北さん……」
「はよ練習するで、…Aも着替えてき」
「は、はい…!」
北さんの言葉に救われ、逃げるように体育館を後にした私は、どくんどくん、と鳴り響く心臓と、冷や汗から目を背けるように更衣室へと歩を進めていく。
角名くんが昨日のことを周りの誰かに言ってしまえば、学校に居場所は無くなるわけであって、そもそも同じ部内の選手と「そういう」関係になってしまった私にも、稲荷崎でマネージャーをやる資格は無いのだ。北さんにバレてしまえば、問答無用で私を切るだろうし、寧ろ先生にまでこの話が流れれば停学。最悪の場合、退学にもなり得る。
「…部活、辞めようかな」
こんな話、誰にも言えるわけないし。最悪の場合だとしても、バレる前に私がこの部活から去ることが何よりも再前作だと思う。身支度を済ませながら、そんなことを考えていれば、微かにボールを叩く音と掛け声が耳を通り抜ける。
「…いかないと、」
重たい足を動かしながら、私は大きく溜息をこぼし、再び体育館へと向かった。
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CAORU(プロフ) - あぁめっちゃいいです好きです大好きです (3月27日 0時) (レス) id: 649305057b (このIDを非表示/違反報告)
なめくじ - こんにちは!神作すぎます!続きが気になる‥ (3月26日 15時) (レス) @page5 id: 14ee6c9b6d (このIDを非表示/違反報告)
ささささな - こんにちは!こんな素敵な作品に出会えて嬉しいです。更新頑張ってください!応援しています。 (3月26日 11時) (レス) @page5 id: 2cec29415a (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん(プロフ) - 初めまして、いや、すごいです!めっちゃおもろいです!角名のこういった作品はなかなかないので、読めて嬉しいです笑 ありがとうございます。更新頑張ってください! (3月26日 8時) (レス) @page5 id: 153e42c66a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七星 | 作成日時:2024年3月26日 1時